【第十一話】「舞い上がり姫」

 土曜日十五時過ぎ。デート当日。


 彼が連れて行ってくれたのは、まさかのプラネタリウムだった。


 なるほど、道理で待ち合わせが早いはずだ。


 待ち合わせ場所からバイクで30分ほどの住宅街に位置するその建物は、スタイリッシュな外装ながらもどこか温もりを感じる空間で、私もなんだか落ち着いた気持ちにな……れなかった。


 理由は単純。彼がイケメン過ぎたのだ。


 普段の彼は「(恋人的な意味で)付き合ってよ」を「(用事的な意味で)付き合ってよ」に誤解するトンデモ能力をその身に宿した、ただのカッコいい彼氏。


 間違っても通常料金より若干高いカップルシートをド直球に私に勧めたり、プラネタリウムでそっと私の手に自分の手を重ねてきたり、真っ正面から私を褒めたり、前に一回だけ一緒に来たことのある喫茶店で私の大好きな「窯焼きスフレパンケーキ(メープルシロップ)」をしれっと注文したり、私にレーズンサンドをあーんで食べさせてくれるような人には見えないのに!


 ……見えないだけで普段からちょくちょくしてるかもしれないけど、それはそれ。


 彼のせいで、私のテンションと脈は終始狂ったままだった。でも、そんな私すら彼は受け入れてくれた。


 結局、私は自分の家まで送ってもらっていたことにも気付かないまま、夢見心地で初デートは終わりを迎えたのだった。

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