霊媒体質女子に楽しく癒されて成仏させられる【ASMR】
砂塔ろうか
Track1 邂逅
旧校舎の一角。ぎしぎしと軋む床を踏み鳴らして誰かがあなたに向かって歩いてくる。
ガチャガチャという鍵を開ける音。
勢いよく扉が開かれる。
「ここね! わたしの救いを必要とする哀れな霊がいるというのは!」
自信満々な少女はあなたを見つけると、歩み寄ってきながらはきはきとした声で告げる。
「私は2年C組の
「ウチのオカルト研究部は、知ってるわよね? そう。旧校舎1階の開かずの教室——つまりここを任されている部活であり、ここの地縛霊——この部屋の主たるあなたを癒す役目を一身に引き受ける部活」
「つまり、先輩から慰霊の役割を引き継いだのが、この私ってわけ」
「……だけどね、私、あなたをこの部屋に置き去りにして自分は卒業、なんてみっともない真似をするつもりはないの」
「だってそれじゃあ、根本的な解決にはならないじゃない。後輩に負担を押し付けるというのもそうだし、なによりあなたが救われない」
「だからね、この
「——今年度中に、あなたを成仏させてみせるってね!」
「……できるはずがない? ふふっ先輩は私のことなんにも説明してなかったようね」
「いい? 私には、歴代の部長たちが持たなかったものが二つある」
七生、あなたの肩をぽんぽんとさわる。
「一つは、霊への接触能力。私は霊が視えるだけじゃなく、触ることができる」
「そして一つが……」
七生、あなたの手を掴む。
「言葉で説明しても信じられないでしょうから、実際にやってみせましょうか。ついてきなさい!」
古びた教室の軋む床を小走りになって駆ける。
七生が扉を開ける。
「いいから! さあ、こっちに!」
七生が廊下に出て、あなたを引っ張る。七生の足下の床がぎし、と音を立てる。
「…………ほら、ね。出られたでしょう?」
「これが、私のもう一つの
「というわけで、これからあなたに楽しい学園生活を体験させてあげるわ」
「あなたについての情報は歴代部長の残してくれたノートでだいたいわかってる。あなたの未練は、一年生で亡くなってしまったばっかりに学園生活を楽しめなかったこと。だから何十年とこの教室にしがみついている——そうでしょう?」
「けれど、それも今日まで。誰もいない教室で羨望に胸を焦がす時間は終わり。今日から、私があなたに学園生活の楽しさを教えてあげる!」
「ふふん。覚悟してちょうだい。あなたに選択権はないわ」
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