酔いは、理解不能の小説を呼び起こす。

うめ生徒

第1話 死ねよ

「死ねよ」


 そう言った私は、右手の中指をピン! と立てる。

 私の話し相手は、仕返しをするかの如く、中指をピン! と立て返した。


「お前は、生きろよな」

「中指を立てながら生きろよなは、意味が分からない」

「意味が分からない? は?」

「いや、だってさ。中指は、死ね系の意思表示じゃん。中指を立てながら、生きろと言うのは、矛盾が生じるよ」

「矛盾が生じたところで、何の問題があると?」

「だからさ、言っているんだよ。中指の示す死ねが本音なのか、口から出た生きろが本音なのか、伝えたいことの意味が理解できないって」

「ほうほう。ちなみに、お前はどっちが本音だと予想する?」

「知るかよ」

「まあ、私にしか分からないだろうからね」


 そう言った話し相手は、上を向いた。


「死のうが生きようが、勝手にせい」

「何なんだ? コイツ」

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