第21話 ゆめまくら その2

「で、これになんの意味があるってんだよ僕。」


 この問いに対して僕の形をした何かは答えず、また意味の分からないことを話し始める。


「なぁ、確か6歳の時、週3のペースで夜ベランダに出されたよな?埼玉なのに雪が降ってたこともあったな。ベランダで部屋から聞こえる嬌声に耳を塞いだっけ。

 7歳の時には火のついたタバコを口の中に押し込まれたな?うるさいって、静かにしろって言われたついでにな。

 10歳の時初めて人に売られたな?

 人に直に肌に触られる事は今でも時々気持ち悪くなるよな。

 11歳の時には画鋲を口いっぱいに入れて殴られたよな?

 しばらく口も聞けんし何も食えんし散々だったな。

 13歳の時は「やめろ!!!」」


「なんなんだよもぅ……………」


「まだまだ短い異世界生活。転生前はこんなにも事柄中心だった世界がどうだ?今は人中心だろ?在り来りだけど人生ってやつはが重要なんだ。

 お前はちゃんと成長してるよ。あの人嫌いで死にたがりなお前が好きな人を作って、人と関わって生きたいと言ってるんだぜ?こればっかりは僕が言わないと絶対気付かないし、気付こうともしないからな。」


「それに僕はまだ愛だのなんだのって叫ぶのは恥ずかしいお年頃。だーからこうして強制的に言葉に出させるんだ。練習だよ練習。日本人的気質が〜とか言い訳して僕はそういうの回避しそうだからな。」


「さっきはガキだのなんだの言って悪かった。いやまぁお前がガキなのは変わりないんだが。まぁ何だ、ちょっとは心の枷が外れたことを願ってるよ。」


「さて、お時間だ。確かにお前はあのまま寝てりゃそのうち治ったが、今回はお前さんが作った縁が、お前を救ったことになっている。縁だぞ?人との繋がりがお前を救ったんだぞ?自信持てって。」


「うん…ありがとう。」


「最後に一つだけいい?」


「あぁ、何だ?」


「僕の振りをして僕を叱ってくれてありがと。知ってる?僕の苗字『郡』は確かに『氷』と同じ発音で言うことがあるにはあるんだけど………僕が言う時は必ず語尾が下がるはずなんだ。」


 そう言った途端制服姿の僕はドロドロと形を崩し、ついにはスライムのような人型のドロドロ人間が姿を表した。


 途端に頭に声が響く。


 ???「まぁバレちまったもんはしょうがねぇな。郡士皇に威厳と祝福を。ほら早く行けよ。『星を堕とす者ステラルシフ』」


 ―星を堕とす者ステラルシフ?なんだそれ。


 ???「お前の魂の諡号だよ。まぁ特に意味はねえがな。知ってるってだけでなんかの役に立つかもしれねぇ。覚えとけ。」


「ああ、本当にありが───」

 意識が遠退いてく。

 薄れていく視界。

 徐々に消える音。

 全てがなくなる瞬間。


 何も見えないし聞こえない。

 そして身体がふわりと浮いた。

 感覚のない空虚な時間が続く。

 意識も、感情も、想いも、 全てが無になる。

 そんな刹那の中で微かに何かが聴こえた。


 ――――――――


「おはよう、サルサ。ごめんね?心配かけちゃって。」

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