閑話 歴史を記す側…ってコト?!

 僕の診療所のお休みは週に2日。


 この世界の1週間は順番に

 バレッタ、セント、スリーマ、イムディーナ、ゴゾ、コミナ、オルミとなっている。なんでも七英雄という半人半神の名前が由来らしい。


 僕もこの前教会の修道女シスターを揶揄うついで

『バレッタ・アンティスミスの軌跡』

 という紙芝居を孤児に混じって聞いてきた。


 なんでもこの世界に元々魔法は無かったそうだ。


 だがある日とある少年に魔法が宿る。

 少年はやがて殺人鬼となり人々を殺して回ったそうだ。

 世界では段々と、しかし着実に魔法を発現させる者が増え、古代文明は崩壊の道へと少しずつ足を踏み入れていった。


 やがて魔法発現者に対しての排斥運動が起きたという。

 まだその当時の魔法発現者の力は微々たる者だったがそれでも当時の人類が恐れるには十分だったとか。

 これに対して魔法発現者達は結託し、一般人を淘汰して魔法発現者だけの社会の樹立を謳い、世界中で混沌とした持つものと持たざる者の戦いの時代へと突入した。


 大国では魔法発現者を根絶する戦いが始まり、一時期は安定期と呼ばれる魔法発現者の被害がほとんど確認されない時代になった。

 だが皮肉なことに際限なく生命の危機に瀕したことにより生き残りの魔法発現者たちの力は飛躍的な進化を遂げてしまった。


 そしてついに1人の魔法使いがこの世界で1番の威力を誇る兵器を軽々超える力を手にしてしまう。


 それが意味するのは完全なる文明の破綻であった。


 文明の破綻により戦乱と飢餓、疫病の発生等により世界の人々は苦しみ、悲しみ、ただ神に縋ることしかできず、数を減らしていった。


 この時代を暗黒時代と言う。


 暗黒時代、世界に魔力が満たされたことにより大地が裂け、ダンジョンが生まれ、魔物が生まれ、ついには魔王なるモノが誕生し、世界を更に荒らしていったという。


 だがそこに7人の英雄が各地に現れる。

 彼らは皆魔法使いではなかったが、それぞれが屈強な心と身体を持ち、性質はバラバラだか平和を愛し目指している、という心持ちは共通していた。


 彼らの行いは持つもの持たざる者の歪みを緩やかに、だが確実に直し、共に魔王へと立ち向かっていった。


 その行動が評価され彼らはそれぞれ神から神器、特殊な力、そして半人半神の肉体を手に入れたという。

 持つ者と持たざる者を率い、ついには魔王の討伐に成功した。この成果を忘れないよう、人類はついに持つ者と持たざる者の垣根を越え、協力を促し、人類の文明を復興へと導いていった。


 我が教会はこの七英雄が筆頭!バレッタ・アンティスミス―――


 すげぇ、胡散臭すぎて柄にもなく結構見ちゃったよ。

 でも紙芝居の中盤以降は教会が如何に素晴らしいものなのかばかりだったからめんどくさくなって聞いてない。

 サルサとの約束もあったし。


 ともあれ世界は1度亡び、魔王という厄災により更に世界の崩壊は進んだが、神の力を宿した英雄によって倒され世界は復興したって訳ね、めでたしめでたし。


 ダンジョンや魔物についてもっと明確な答えを聞いてみたいけどここじゃ無理そうだ。


 さ、帰るか。

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