最強パーティーと行く異世界スローライフ

悠遠奏音

プロローグ

第1話 卑屈な少年

__人生は、カードゲームだ。




 生まれたときに神様から配られた手札によって全てが決まる、そんなカードゲーム。


 それは、例えば顔だったり、頭の良さだったり、運動神経だったり、家庭環境、親の財力といったものもあるだろうか。


 そういったカードが事前に配られ、後はそのカードが強ければ強いほど出世していく。


 生まれながらに全てを持っているやつもいれば、何ももてないまま生まれてきたやつもいる。


 平等なんてない。運だけがものをいう。


 人生とは、そんな初手の手札によって決まる、戦略も知略もいらないクソゲーだ。




 そして、配られた手札が極端に少ない俺は――




「生まれながらの、負け組だ」




 俺の名前は新栄修治。


 死んだ魚の目をした、神様から何も配られなかった陰キャ高校生だ。


 学力も、運動神経も、人並みにはこなせるが、それだけ。平均を上回ることで精一杯。コミュ力は全くないし常にボッチとして教室の片隅でスマホをいじっている、そういう男だ。


誇れるものは何もない。


 


 強いていうなら、人より若干運が良いということだろうか。


 なぜか信号に引っ掛かったことがないとか、突然の雨でもなぜか必ず傘を持っているとか。そんな、人に自慢すると微妙な空気になるものばかり。




 まあ、今日みたいな突然の雨の下校中は、優越感に浸れるのだから悪くはない。


 今もほら。こうして傘がなく濡れながら帰っている人々を横目に、悠々と傘をさす。


そして何もみずに横断歩道を渡れるのも、その運があってこそのこと――




「へ?」




 瞬間、横から何かとてつもない衝撃がはしりニ、三十メートルほど派手に吹き飛ばされる。


 体中が悲鳴を挙げ、頭もぐらついて機能しない。周り中が赤く染まり、否、染めているのは自分だ。故障した体のあちこちが惜しみなく血を吐きだし、蛇口のように赤い液体を周囲にぶちまけている。


感覚も曖昧になり、意識はぎりぎり繋がっているという状態だ。そんな中、俺が見たものは、




(……赤じゃん。もう最悪)




 血のせいではなく、見えるのは止まれの意味を指し示すあのマーク。十何年の人生経験から、円がないとたかをくくっていたそのマークがこちらを嘲笑っているような錯覚にすら陥る。




 今までの人生のなかで、信じきっていたものに裏切られてからの突然の死。


 嗤われるのも当然だ。自分でも嗤えてくる。


 


「せめて、童貞は卒業したかったな」




 そして、そんな童貞が死ぬときに言うであろうランキング第一位を言いはなったところで、意識は暗く、淀んだ世界へと沈んで言った。


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