滅亡する秋田 (This is Date a Lament!!)
ヨーン デタンシェ
プロローグ - 審判の日 -
「これが最新の目撃情報とAIによる分析結果です。」
秘書官はスクリーンを指し示しながら話し始めた。
「この赤い点がクマの目撃地点です。ここ数ヶ月でクマの目撃報告が急増しています。山間部からはじまり、範囲が広がり都市圏内での目撃も多くなってきています。そして、AIの分析によって導きだされた今後のクマの出没予測が・・・こちらです。」
県知事の剣知仁は愕然とした。
「えっ!? ええぇっ!? どういうコト!?」
スクリーンに映し出された秋田県のマップに、赤い点がポツポツと表示されたかと思えば、最終的に秋田県全土が真っ赤に染まったのだ。
秘書官は落ちついた声で答えた。
「AIの予測では、まもなく秋田はクマで覆い尽くされるということです。」
そんな馬鹿な。ウソでしょ。どゆこと?
「いったい、何がどうしてそんなことに・・・?」
県知事は恐る恐る秘書官に尋ねた。
秘書官は説明を続けた。
「その疑問の答えも、AIシステムの連携によって解明されました。先程のクマ目撃情報解析AIシステム”クマデネヴェガ”の結果をもとに、原因反復推論AIシステム”ナシテ”および”ナントス”によって1つの結論が導きだされたのです。
知事、これはただのクマではありません。クマに偽装した人間。それも隣国、宮城県の工作員です。」
県知事は驚きのあまり言葉を失った。理解が追いつかない。
クマに偽装?工作員?宮城県?ナンデ?AIスゴイナー。
秘書官は話しを続ける。
「知事、宮城が我ら秋田に対し侵略の準備を進めているのです。のんびりしてはいられません。急ぎ警戒体制を強めましょう。我々も戦争に備えるのです。竿燈を24時間体制で稼働し対空警戒を。火の用心の夜回りも増やしましょう。また猟友会へ連絡をとり・・・」
突然、会議室の扉がバーーーンっと開き、旗を背負った1人の職員が走りこんできた。職員は、片ひざと片手を床につけ、大きな声で報告した。
「伝令! 宮城県からと思われる宣戦布告文書がメールで届きました!!」
知事は呆然とした。
報告を聞いた秘書官は、ゆっくりと、確固たる意志を込めて、知事へ進言した。
「知事、緊急事態宣言を発令しましょう。今すぐに。通信手段のない地域には急ぎ回覧板を。戦争はもう、始まっているのです。」
知事は困惑した。いや急にそんなこと言われても。。。
たしかに緊急な状況だってのはわかる。戦争って言葉がでててちょっと怖いし。それに緊急事態宣言を発令しろっていわれても、知事どうしていいかわかんないよ><
「えっ・・あ・・・わかった。緊急の事態だ。発令や指揮はすべて君に任せる。戦争に関して私は無知だ。君のほうが適任だろう。最善を尽くしたまえ。責任は私がとる。」
知事は秘書官に丸投げしつつ威厳を保てるよう言葉を選んだ。
「お任せください。すぐに行動に移します。」
秘書官はポケットからスマホを取り出すと、緊急事態宣言をSNSに投稿した。神の啓示というものだろうか。秘書官の行動すべてに迷いがない。
彼はきっとこの秋田を救う救世主となるのだろう。知事はそう確信した。
”現時刻をもって、秋田県は緊急事態宣言コード:”BujohoSitansi”を発令します。いわゆる戦争状態になります。県民の皆さまには、ご理解とご協力、いいね、フォロー、拡散をどうぞよろしくお願い申し上げます。#ガチでやばい #AI提案 #ごめんしてけれ”
知事は天を仰いだ。あぁ神よ、我らを救い給え。赦し給え。
どうかどうか、この秋田が、この物語が、ハッピーエンドを迎えられますように。
プロローグ - 審判の日 - おわり
滅亡する秋田 (This is Date a Lament!!) ヨーン デタンシェ @okemaru_ngx
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