第41話
「そんな事があったんですね」
福島先生はそんなことを考えて教員をやめたのか。知らなかった。
「ところで、今は何をされているんですか?」
福島先生は神妙な顔つきになった。そして一つ呼吸をして、話し出す。
「私は今、ホワイトフラワーをこの世界から消すために研究をしている。そのために、不幸になっている人はほっておけないんだ」
「……なるほど」
僕を助けたのはそういう理由か。
僕が一人で納得していると、「それで」と付け足して話を続ける。
「あの病院には、亡くなっちゃったんだけど、ホワイトフラワーに祈った高校生が居たの」
嫌な予感がした。最近あの病院で亡くなった高校生を僕は知っている。
「もしかして、その生徒は佐藤美優って名前の生徒ですか?」
「……そう」
やっぱりか。なんだかすべてが繋がったような気がする。
「私は一年前ぐらいから、彼女から相談を受けてた。ホワイトフラワーに祈ってしまって、不幸が来ないって。今回の死はきっと彼女が祈った事に対する代償」
「彼女は、あの花に、なんて祈ったんですか?」
「それは……言えないわ。でも人を不幸にするような願いでは無かったわ」
「……そうですか」
あの花はダメだ。本当にこの世に存在していいものではない。
福島先生は窓から外の景色を眺めながら、中身のないコップに手を伸ばす。
「あ、もう無くなったんだった。お代わりしようか」
福島先生は、中身が無い事に気が付くと、コーヒーを二つ注文した。
店員がテーブルを離れた後、僕は福島先生の目を見ながら真剣に聞いた。
「どうしたら、あの花をこの世界から消すことができますか?」
福島先生は一瞬目を丸くした後、一つ息を吐いた。
「あの花をこの世界から消すための方法は、祈ること。ただそれだけ。ホワイトフラワーにホワイトフラワーの消滅を願うの。そうすれば理論上はこの世界から消える。でも、あの花を前に、そんなことを願うのは、相当難しい」
「……どうしてですか?」
「あなたは、今目の前にホワイトフラワーがあったら、佐藤さんにもう一度会いたいとか、事故を無かった事に、とか願うでしょ」
福島先生の言う通りだ。
もしも、今あの花が現れたら僕はきっと佐藤の事を願ってしまう。
僕は思わず唇を噛んだ。
僕たちはその後、何も話すことなく、コーヒーを飲み干した。
そして、一息ついた後、喫茶店を後にした。
「じゃあ、もしも何か話したいことがあったら、私に連絡して」
「……はい。ありがとうございます」
「一応、連絡先だけ交換しておこうか」
僕と福島先生はメッセージアプリの連絡先を交換した。プロフィールの名前は、『田中美緒(福島美緒)』となっている。
「じゃあ、これで。元気でね、柿崎君」
「ありがとうございました。あと、ごちそうさまでした」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます