ホワイトフラワー

増井 龍大

プロローグ

 高1の冬。

 雨の中、傘を持たず、いつものようにイチョウの並木道を進んでいた。

 なんで、うまく生きれないのだろう。

 目の前では同級生がグループになって、傘をさして歩いている。

 この時の私にできたことはそのグループの隣を走り去ることぐらいだった。

 駅前の屋根のある駐車場の中、自分の瞳からも雨が止まらなかった。


「もう、こっちに来ないでくれる?」

「世間の目もあるし、迷惑なんだよね。邪魔なの」

「あの人よりあなたが居なくなった方が良かった」


 雨の音で昨日の傷が深く抉られていく気がした。

 目をこすって、ふと前を見ると、極端に白い一輪の花が花壇に植えられていた。

 美しかった。ただただ美しかった。

 その花は雨に当たって、今にも折れてしまいそうだ。

 私はその花壇を駐車場の邪魔にならないところに置いた。

 そして私は、強く、強く祈った。


 ――どうか、どうか、高校生活のやり直しをさせてください。もう二度とあんな事態にはさせません。その後はもう何もいらない、何も望まないので――


 この時、世界の時間が巻き戻った。

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