お酒で、記憶にございません!
羽弦トリス
第1話新人歓迎会
その職場は、名古屋市にある「ひかりごけの里」と言う重度身体障害者療護施設だった。
4月に、新人が入ってきた。
名前は、尾形亜美28歳。
介護福祉士の資格を有した彼女は実習の時から光っていた。
この施設はグループ会社なので、今年は現場に1人と事務職に1人採用された。
現場職員は20人程いる。
夜勤、遅出は歓迎会には間に合わず欠席。
また、飲めない人間は参加しない。冷たいヤツラだ。飲めなくても参加すりゃいいのに。
これが時代か。
水沢春太は45歳。介護福祉士でサービス管理責任者である。あと、社会福祉士。
水沢は同期の三嶋涼平45歳に、
「また、女の子増えたね。まぁ良いことだが、我々は既婚者だ。関係ねぇな」
「水沢君、まだまだ、いけるよ!僕は。女の1人や2人」
「強がるなよ!尻に敷かれているくせに」
と、入浴介助をしながら喋った。
この日は、着脱だったので暇だったのだ。
一柳弘斗30歳、沖山洋平27歳、
この5人は仲が良くてしょっちゅう飲んでいた。
水沢と三嶋が話していると、有馬課長が現れた。
「君たち、今夜の新人歓迎会を仕切っているよね?」
と、課長が2人に言う。2人はこの男が大嫌いだ。免許も無いくせに、現場の時は威張り散らかし、中間管理職になったら、現場に媚を売る。
現場が嫌だと言えば、彼は困るのだ。
「何だ、課長か?だから、どうした」
「店、予約するのを忘れて、他の店に今電話したどこも満席で知ってる店はないかい?」
「おい、課長」
「何だね?水沢君」
「お前、良くそれで課長やってんな?だから、お前に後輩は付いて行かないんだよ。オレが電話する。和食のみち潮だな」
「み、みち潮?……あそこは高いじゃないか?」
「おい、課長。水沢君が提案したのに、断るのか?じゃ、歓迎会はあんたのミスで出来なかった事を言いふらすからな」
と、三嶋は積年の恨みを晴らしていた。
「……じ、じゃあ、みち潮で」
有馬課長はその場を去った。
この課長は、もとヤンキーらしい事を言って強がっていたが、中身は全然。
馬鹿で現場では人を小馬鹿にしていた。しかし、現場では課長よりサビ管の方が上なのだ。
しかも、水沢は社会福祉士の免許を持っており、三嶋はPTの免許も持っている。
頭じゃ、課長では勝てないのだ。
入浴介助が終わり、夕食の食事介助が終わると、1日入浴介助の仕事をしていた新人の尾形を連れて、タクシー2台を呼び、みち潮に向かった。
19時宴会はスタートした。
課長は新人の尾形と事務の新人の安田の紹介と、新人の挨拶だった。
課長は安田と話し込んでいたが、安田は辛そうだった。
尾形は笑いながらビールを飲んでいた。
刺盛りがでると、皆んな驚いてパクついた。
水沢と三嶋は、シラけた顔で見ていた。
若いヤツラやここで飲まない課長は喜んだ。
そろそろ、焼酎を皆んな飲みだした。
尾形はハイボールだった。安田に至ってはカルアミルクだった。
散々飲んで、お開きの直前、ひかりごけの里の母体である病院の茶園先生が現れた。歳は46歳。
「茶園先生、こっちこっち」
と、水沢は手招きした。
「お、水沢ちゃん。お久しぶり」
「先生は飲んでるの?」
息が酒臭いからだ。
「いや、今夜ね、看護師が1人寿退社するから送迎会だったの。で、飲んじゃった。もう、終わり?」
「もうすぐです」
「じゃ、割烹料理屋の早水どうだい?いつものメンバーで。新人誘って」
「さすが、先生。それで無くては!」
と、いつもの5人と尾形は早水に向かった。
課長と安田は、別の店に向かった。
新見が、
「皆さん、ウコン飲んどきましょう。明日も仕事ですし。私と水沢さんは早出ですから」
そうしようと言う事で、ウコンを皆んなで飲んでいたが、新人の尾形が一柳にスマホを見せた。
一柳はLINEを読んだ。
「大変です。安田からのSOSです。どうしますか?」
何が起きた?
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