ザ・ファックツアー!

二十三

プロローグ

目を開いてしばらくの間、ぼんやりと天井を見つめていた。

ぼやけていた天井のライトが少しずつはっきりしてくる。眩しさを感じたのは、それからしばらく経ってからのことだった。


一体、どのくらい眠っていたのだろうか。思い出すのは、何かの書類にサインをした後のことだ。あの男がアタッシュケースから注射器を取り出し、暗殺者のような素早さで私の首に刺した。チクリと痛みが走り、そこからの記憶はない。


今振り返ってみると、それはまるで夢だったように感じる。そうであってほしい。いや、きっと夢に違いない。


最近、私は現実と夢の境界に生きている気がする。


認めたくない現実から目を背けて生きるには、想像の世界に閉じこもるのが一番だ。できることなら、ずっとこのまま眠り続けていたい。


外の世界には出たくない。


誰とも会いたくない。


私は石になりたい。


妻を失ってから、私の心はこの世界に居場所をなくした。自殺も何度か考えた。どうせ、あと数年しかない命だ。何を待つ必要があるのだろう。さっさと妻の後を追えばいい。それでも、できなかった。この世界にいられないほどの喪失感を抱えていても、自ら命を絶つ勇気はなかった。しかも、一つだけ心残りがあった。妻の遺言だ。


彼女が何かに悩んでいたことは知っていた。しかし、彼女はもういない。ならば、彼女の願いに応えることが私にできる最後のやりのこしたことだ。


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