香坂 永斗は能力者である。

@Kagaya0729

プロローグ

世界が血生臭くなったのは何時からだったろう?


その答えは知っている。

俺が生まれてまだ間もない頃、大体15年ほど遡るんじゃないだろうか。


当時世界には70億の人口がいたとか、このニホン本土は全て人類の居住地だったとか色々と話は聞くが、その頃までは特に大きな争いもなく平和だったらしい。

まあ国によっては紛争やらテロやらと穏やかではない場所もあったらしいが、それでもかねがね、人類のほとんどは平穏な暮らしって奴を謳歌出来ていたんだと。


それが崩されたのが15年前。時空崩壊と呼ばれる天変地異。

地球の環境が滅茶苦茶になり、人の手のものとは違う謎の遺跡が各地に出現。

それと同時にこれまで地球で確認されなかった未知の生命体が大量に出現したのだ。


今はキメラという名称が付けられ、その存在は認知されているが出現直後の当時はそれはもう大混乱だったらしい。


当然だろう。

人間を優に超える2メートルから3メートルの巨体。

人だか獣だか形容が出来ない様な醜悪な姿で人間に対して殺意増し増しの姿で我先にと奴らの大群が襲い掛かってくるのだ。


どこからともなく何の予兆もなく現れた為に後世で『第一次人魔大戦』と呼ばれるこの戦いの中で人類史類を見ない程の悲劇と称された『大虐殺』が引き起こされるのもまあ、必然だったのかもしれない。


奴等は当時のあらゆる兵器が通じなかったらしい。

今で言うアームズウェポンなんてものはも存在しない為、キメラが持つ歪曲障壁を突破する事が出来なかったのだ。


そうして人類が持つ対抗手段が一切合切通じないとなれば、そこにあるのは一方的な蹂躙・虐殺だけだ。


この『大虐殺』はキメラがその姿を消すまで行われたらしく、その被害は全国各地に至った。


時間で言えば4、5時間。

たったそれだけの間で人類の総人口はその6割近くを失った事になる。

『大虐殺』により文字通り全滅した都市や国は幾多とあり、それらの場所は今もなお禁足領域と呼ばれる程の危険地帯なんだとか。


で、いよいよもってやばい。

何故かキメラはいなくなったけど、次現れたら今度こそ一人残らず殺し尽くされるという絶体絶命だった時、彼等が現れたんだ。


彼等曰く自称異世界から来た者。

20人程の男女の集団であり、その姿は人間に近いが、人間とは全く異なる形状をその身に宿した彼等は自らを『オリジンズ』と名乗り人々の前に現れたのだ。


この20人の話なんだが、余りにも荒唐無稽だ。

彼等の手によって再び現れたキメラは撃退されたらしいが、


曰く剣を振るえば一振りで数百数千のキメラが吹き飛んだ。


曰く呪文を唱えれば炎の柱が地面から吹き出し、水の壁がキメラを飲み込んだ。暗雲が生み出され無数の雷の槍がキメラを貫いたのだとか。


いや神話か。一体何者なんだオリジンズ。

でっち上げだ、で片づけるにはその出来事は余りにも最近過ぎた。

15年前、確かに俺はまだ生まれて間もない為記憶にないが、俺の両親や他の大人達はそれを目にしている。

実際にその暴れっぷりを見ているのだ。だからこそ、先の戦いを経験した世代にはオリジンズを狂的に信仰する者も多い。

救世教なんて宗教が広まっているのもそういった経緯があるから。


今現在オリジンズは元の世界に戻ったらしいが、彼等は帰還する前に人類に力を授けたのだという。


力というか、知識と技術か。

時間的猶予がなかった為にオリジンズが率先して人類への啓蒙を行ったのだとか。


その結果、まず国家という形は解体された。

日本に限らず各国の政府機関は真っ先に大虐殺によって消滅してしまったのだから残しておく理由もなかったんだろう。


日本改めニホンはその人口を地域ごとにそれぞれ一つの都市に集約させた。


第1都市『トウキョウ』、第2都市『キョウト』、第3都市『ヒロシマ』、第4都市『フクオカ』、第5都市『ミヤギ』、第6都市『ホッカイドウ』の計6都市だ。


オリジンズによってもたらされたキメラの歪曲障壁を突破する防衛兵器を備えた防壁によって囲まれたニホンにおける数少ない人類の生存圏。

たった6つ?と思う者もいるかもだが、当時の二ホンの人口は3000万を切っていた為、問題はなかった。


そして、オリジンズが授けた技術。その最たるものが一つある。


それは―――。

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