第13話 近くなった距離感!  みみっく

 俺との関係に少しは馴れてきた感じなのかな? と思うと少し嬉しい。


 ルナに手を引かれて暗闇が広がる大きな部屋に入ると再び侵入者を防ぐ為か、俺達を逃さない為なのか入ってきた入口が塞がれてしまった。



「ふぅ〜ん……やっぱりねッ」



 ルナが振り返り驚きも、不安な表情もせずに感心をした表情をしていた。



(おいおい。大丈夫なのか? ルナちゃんは、余裕そうだけど……心配だな。毎回こんなんじゃ心臓が持たないぞ)



 持っていたライトで辺りを照らすが近い場所にしか明かりが届かず、相当に広い部屋だと理解できる。



「さて、どうするかね?」


「決まってるでしょ? 探索だよッ」


「あぁ……言うと思った」


「むぅ……なにそれ!? 単純とでも言いたいの?」



 可愛く頬を膨らませて睨まれるが全然恐くなく、むしろ頬を膨らませて可愛く感じる。


 思わずニヤけているとルナの表情が一瞬で緊張をした表情となり、その緊張が俺にも伝わり移り緊張をする。ルナの目線をの先にライトをゆっくり向けた。


 そこには音も立てずに涎を垂らし、こちらを見ているオオカミの姿をした牛程の大きさのゲームでいうところの魔獣だった。


 魔獣と目線が合うが反応は無く、こちらを恐れも慌てもしない。



(そりゃそうか……俺達に倒せそうにもないし、逃げ場所もないから慌てないのか? 随分と余裕そうだな)




 魔獣は何度か瞬きを繰り返し、瞳がスッと細くなった。猫の威嚇のように毛がバサッと逆立ち、前脚を折り徐々に低姿勢になり威嚇の声を上げる。

 魔獣の黒色の毛は、ヤマアラシのようになっている。相当、刺激をしてしまったようだ。



(こうなったら、やるしかない!)



 借りた剣に手をかけ、鞘から抜こうとした。そんな俺の手にルナが、そっと添えてきた。そんなルナの目線は、魔獣に向いたままだった。

 

 ルナはかなり真剣な表情で、魔獣の正面に立つとルナの雰囲気が変わり全身から仄かに光る揺らめきが出始めた。


 前傾姿勢で戦闘態勢だった魔獣が、ルナも戦闘態勢のような構えで片足を後ろに移動をさせると魔獣が襲い掛かって来ると、ルナが横へ軽く動くと攻撃をかわし。


 ルナの後ろにあった壁に激突しそのまま床にズレ落ちた。



(おいおい……あんなのをまともに受けたら大怪我じゃ済まないだろ)



 だがルナの表情は相変わらず真剣な表情だが余裕のある表情だ。魔獣の方は攻撃をかわされて苛立ってるようで低い唸り声を上げた。


 ゆっくりと振り向き口からは涎を垂らし、興奮しているのか間合い、タイミングを気にしている様子はなく標的を見つけると瞬時に飛びかかった。


 ガルルル……ガオォォー!と低く吠えながらルナを目掛けて襲いかかると、ルナが掌を魔獣に目掛けて翳すと眩しい閃光を発し光部屋中が眩しいく照らし出され、目を開けていられない。


 ドサッと床が揺れるほどの音が部屋に鳴り響いてシーンと静寂に包みこまれた。



「終わったよ? 大丈夫?」



 普段と変わらないルナの声を掛けられ、ゆっくりと目を開けると床に魔獣が倒れ動かなくなっていた。



(はぁ? こんな大物を一人で倒したのか? そりゃ……他の猛獣なんか恐くもないだろうな。普通、あんなデカい鳥なんか恐くて触れないって!)



 倒した魔獣に恐る恐る近づいて見ると、近くで見ると迫力が違い匂いもキツイ。



「んっ。臭い……それに迫力があるし、まだ生きてる感じに思えるオーラがあるな」


「魔獣って呼ばれるからね。死んでも魔力が流れてるみたいだよ」



 (えっと……それってゲームの世界の話だよな? いや、目の前で魔法を見ちゃったしな……現実か)



「それで、これどうするんだ? 放っておいても良いのか?」


 

 ルナが言いづらそうな表情をして近づいてきた。



「あのね、本に書いてあったんだけど……魔獣の体の中にある魔力の元の……その、魔石を体内から取り出すんだって」


(あ……それならイノシシで経験済みで、そこまで抵抗は無いかもな。大きさがちょっと大きくなって……形もちょっと違うくらいだろ? あ、臭いはキツイな……それに今回はカッターナイフじゃなくて剣もあるしナイフも貸して貰ってるんだよね!)


「そっか……ルナちゃんは苦手なんだ? その表情って事は……」



 少しニヤけた顔でルナを見つめると目を逸らして悔しそうな表情をして、素直に頷いた。



(あれ?素直に認めるんだな……意外だな)


「そうなんだ? まぁ苦手な事はあるよな」


「あのね、鳥も捌けないっ」


(鳥か……鳥ってあのデカいのか? それとも鶏? デカいのは捌くの大変そうだよな……おお仕事って感じだしな)


「そうか。気にするなよ」


「任せても良いかな?」


「あぁ。問題ないぞ。これだけは経験者だしなぁ」



 そういうとホッとした表情になり数歩後ろに下がり、見ないように目を逸らしライトの光だけを魔獣の腹に当てた。


 剣で捌こうとするが長すぎて扱いにくいのでナイフを取り出した。解体作業をするとナイフがスルッと入りカッターナイフの時とは大違いだった。



「そのナイフ……ママのナイフじゃない? 勝手に持ってきたら怒られるよ! 普段は優しいママだけど……コワイよ!」


「セレナさんが、こっそりと渡してくれたんだけど?いざという時に使ってくれって」



 ルナちゃんが驚いた表情をして俺の顔を見つめてきた。



「あなた……何者? ママとどういう関係? そのナイフは普段使わないし、使わせないナイフよ?」


(何者と言われても……セレナさんとは出会ったばかりだし、関係は拾われて助けられた関係だぞ?)


「拾われて助けられた関係だな。それに、そんな凄いナイフなのか?」


「ん……詳しくは分からないけど、ママが大切にしているナイフかな」



 話をしながらサクサクと切り進めて魔石らしい仄かに輝く石を見つけ出し取り出しに成功した。



「はぁ…… ダンジョンでは汚れや臭いは、我慢っていうのが基本なんだけど…… その格好じゃ、そうも言ってられないよね」


「そうなのか?」


「ダンジョンでは、何があるか分からないから魔力の消費を極力抑えて過ごさないとなの。汚れや臭いでは、死にはしないからね」



 そう言いつつ手を俺に翳すと体中が温かくなったと思ったら魔獣の血がなくなり臭いや汚れが無くなっていた。


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