笑われているのか?興味があるのか?

白鷺(楓賢)

本編

人の笑顔に対して、いつも戸惑ってしまう自分がいます。誰かが笑顔を見せると、それが「私を笑っている」のか、それとも「興味を持ってくれている」のか、その判断がとても難しい。これが、私の長年抱えている悩みです。


私はASD(自閉スペクトラム症)という特性があり、これが原因で、他人の表情や言葉の裏にある感情を読み取るのが苦手だと言われたことがあります。その一方で、HSP(高感受性者)という特徴もあり、他人の感情や細かい変化にはとても敏感な部分もあるのです。しかし、なぜか「笑顔」だけは理解できないのです。それが、私をますます混乱させます。


### 笑顔を疑う日々

ある日、教育実習生が笑顔で私に話しかけてきました。私は、彼女が親しみを込めて話しているのか、それとも私を笑い者にしているのかが全く分からず、ただ質問に答えました。彼女は終始笑顔のままで、何度も話しかけてくれましたが、そのたびに心の中で疑問が膨らんでいきます。


「本当に親しみを感じているのか?それとも馬鹿にしているのか?」


こういった疑念が生まれるのには、過去の経験が大きく影響しています。私は子供の頃、酷いいじめに遭いました。学校では同級生から笑われ、職場に出るようになっても、上司や同僚に馬鹿にされることが多く、怒鳴られることもありました。そうした経験の積み重ねが、今でも人の笑顔に対して素直に受け止めることを難しくしているのです。


### 認知の歪みと向き合う

最近では、認知行動療法を取り入れるようになり、少しずつではありますが、人の目や評価を気にしすぎることが減ってきました。とはいえ、完全に人の笑顔を疑う癖がなくなったわけではありません。ふとした瞬間に、また笑われているのではないかと考えてしまうことがあります。


これは、自分が他人を信用するのに時間がかかる性格のせいでもあります。誰かと心を通わせるまでに、私は長い時間を必要とし、なかなか人との距離が縮まりません。このため、孤立感を抱くことも多くあります。それでも、過去に騙されそうになったり、人に流されそうになった経験があるため、今ではますます人を疑う気持ちが強くなってしまいました。


### 敏感さの良い面と悪い面

それでも、HSPとしての敏感さには良い面もあります。例えば、他人がしんどそうな表情をしていると、誰よりも早く気づくことができます。このような微妙な感情の変化には非常に敏感で、相手が困っている時にはすぐに手を差し伸べられることができます。しかし、この敏感さが逆に、人の笑顔を信じられなくさせる原因にもなっているのです。


笑顔を疑いながら生きることは、とても生きづらいことです。自分でもそれを自覚しており、どうすればもっと気楽に人と接することができるのか、日々模索しています。それでも、笑顔の真意を見抜くことができない自分に、今でも悩み続けています。


### 最後に

私がこうして笑顔に悩んでしまう背景には、過去のいじめや社会での経験、そしてASDやHSPという特性が影響しているのだと思います。それでも、自分なりに少しずつ前に進もうと努力しています。この生きづらさは、もしかしたら同じ悩みを抱える人にとっても共感できる部分があるかもしれません。笑顔というシンプルな表情が、こんなにも難しいものだと感じている人が、他にもいるのではないでしょうか。


笑顔が純粋な親しみであると信じられる日が来ることを、私は心の中で願っています。

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