想い果 ―おもい はつ―

一閃

第1話私のプロローグ

 息苦しくて目がさめた。全身汗でびっしょりだ。夢を見た。誰かと言葉を交わして…思い出せない。思い出さない方がいいと言うことか。多分、あなただ。

 未だに年に数回あなたの夢を見る。顔がぼやけた家族といるあなた。「家族を捨てて来た」と言うあなた。私と手をつないで歩いているあなた。抱きしめられる夢で目ざめた時は不思議と体に感触すら残っているようで切なくなった。色々なシチュエーションであなたは登場して来たが、こんなにも苦しい夢は初めてだ。私の中で何か起きているのか…あなたに何か良くないことがあったのか…。漠然とした不安感に襲われた。

 私やあなたに何があっても、すぐに知ることも救うこともできないことはお互い解っている。ただ、朝を待つしかないことも知っている。朝になれば、私のことはさて置いて世の中は動き出す。それに紛れて私の一日は始まるのだから。


 あなたと会わなくなり、時間は容赦なく過ぎて行き、幾度も季節は変わり、私を取り巻くものも姿形、色を変えて行った。だけど、私は誰かと比べて怖がっていたあの頃と比べて何も変わっていない。相変わらず独りだし、相変わらず運の無さを嘆いている。

 そして、あなたが選んだ彼女ひとと比べて、あなたの現在いまの人生と比べて暗然としている。


 あなたの現在いまの顔を知らない私は…偶然すれ違っても、懐かしむことも泣くこともできないのかもしれない。

 まるで、いつまでも終わらない『かくれんぼ』をしているかのように、未だにあなたに見つけてほしいと思う自分に気づいてしまう瞬間がある。


 ねぇ、教えて…私はどうしたらいいの?

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