これから
小狸
短編
自分が死んだ後のことなんてどうでも良い。
60歳くらいで死にたい。
そうだろう。
そうなんだろう?
そうなんだよな?
本当は皆、そう思っているのだろう。
何だかんだ言いつつ、そう思っているのだろう。
地球温暖化とか、エコとか、省エネとか、少子高齢化とか、年金問題とか、エネルギー問題とか、これから先の、自分が死んだ後の未来の話なんて、別にどうでも良いではないか。
だって死んでいるのだから。
生きていないのだから。
存在していないのだから。
そこに居ないのに、どうして責任を取らされる必要があるのだ。
後々の世代が、「あの頃の世代は酷かった」と言うのが怖い? はっ。下らない。人間なんて大量に、それこそ死ぬほどいるのだ。私一人がそう考えたところで、世界は何も変わらない。
それが、お前ら上の世代が幼い頃から大人という立場を盾に口酸っぱく言ってきた、「現実」というものなのだろう?
例えば私は、子孫を残すことができなかった。
結婚適齢期を過ぎても婚約することなく、独身のまま過ごした。
今から出産するのは、現実的ではない年齢である。
そして何より現代においては、別段世の中は、子どもを必要としていない。
幼稚園があれば、園児が騒々しいと苦情が来るような世なのだ。
育児・子育てに対して、厳しい世界であることは明白だろう。
そんな世の中を見て、結婚とか、家族とか、そういうものがどんどん実現不可能な現実に見えてきて仕方がないのである。
でも、私はそれにはなれない。
私は根本のところで、どうでも良いと思っているからだ。
いざとなったら、母という役割も、妻という役割も、捨ててしまえるからだ。
そんな現実的な分析が、いつも私の心を奈落に突き落とす。
どうでも良いじゃないか。
これからの世の中なんて。
日本なんて。
世界なんて。
そういう難しいことは、余裕のある人たちが考えていけばいい。
幸せで恵まれた人たちが考えていけばいい。
どうせ私みたいなのの方が多数派なんじゃないのか。
本当は皆、面倒くさいって思ってるんじゃないのか。
あー、もう全部どうでもいいや。
早く死ねないかなあ。
そんな風に思う。
自殺をする勇気はない。
だから私は今日も、仕事に赴く。
ぎりぎり、人間であるために。
(「これから」――了)
これから 小狸 @segen_gen
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