天川裕司

タイトル:扉


部屋の中に扉があって、扉があって、扉があって、扉があって、

扉があって、扉があって、また扉があって、扉があって、

全部入って、俺はそこに落ち着く。


そして入った扉には全部鍵をかけ、

こうしておけば、当面の間、

誰もここまでやって来れないだろう。


これが俺なりの、

引きこもりのルーツになってしまったようだ。

でも全部心の中でのこと。

神様の目から見たら、こんな扉、全部無いに等しい。

全部見透かされている。

俺のことを、俺が知る以上に、神様は全部ご存知だ。

人ではない、神様に。


扉を閉めたら、孤独になったような気がする。

でも気がするだけ。

地球上には何人もの人が

今でもちゃんと変わらず生きている。

生かされている。

単なる状態変化。

自分で幾らそのつもりになっても、状況は変わらない。

それに、こんな奥まった所に居たら、

買い物もできないし、

自分で自分の首を絞めるようなもの。

そんなこと、馬鹿らしい。

馬鹿らしくても、それをやっちゃうんだよね人間は。


わかっててもやる、ってのは

一体どう言うこと?どう言う心理?

ここで、いろんな事を考えていた。

めちゃくちゃ静かな空間で、

ゆっくりと時間があって、何度でも、そんな事を、

誰にも邪魔されず、考え続けることができてしまう。


でも神様は、俺にこれを望んで居たのか?

よくわからない。でも「そうなんだ」…

そういうふうに自分を落ち着かせる心境がある。

これは果たして、信仰なのか?


この扉を出て行く日、それはいつなんだろう。

「ねぇ扉さん、いつなの?俺がここを出て行く日って?」

喜怒哀楽をもって、怒ったり笑ったり、

楽になった時に俺はそう訊いていた。

扉さんは何にも答えてくれない。

でも時の経過が、何か、教えてくれるような気もした。


………よく見たら、部屋の壁も、なんとなく扉に見えちゃう。

あのクーラーでさえ、その表面の壁を見たら、

壁から扉…やっぱり扉に見えちゃう。


街行く人の体を見ても、その皮膚、その皮膚の表面、

その表面がなんとなく壁に見えて、扉に見えちゃうw

なんかまるで、この世の物体のなんでもが扉に見えちゃうんだ。


「思い過ごしだったんかなぁ…取り越し苦労w」

部屋は白い空間で、闇が無いのがなんだか不思議。

まるで心のよう。

ちょっと色をつければその色の波紋が

思った以上に広がって、

まるでこの部屋を支配してしまうかのよう。


デリケートな部屋…デリケートながら

もしかするとこんな扉、取り壊されるのも早いかも。


俺はベッドからまた起きて、

顔を洗ってドライヤーで髪をセットして、

朝ご飯はいつものクロワッサンとコーヒー

そしてサラダ。


で、「行ってきます」

と誰も居ない部屋に挨拶をして、

いつものように部屋を出る。

街行く人が新鮮に見え、満員電車も恋しくなった。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=3jvqFyS4qxQ

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天川裕司 @tenkawayuji

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