花屋

高槻

黄色いスイセン

冬になると日が沈むのがずいぶんと早くなる。

昼間の日差しは姿を消し、夜の月の光が静かに冷たく降り注ぐ。凍えた指先を暖めようと、自販機で温い珈琲を買う。手に取るとその熱さが指先から伝わり、優しげな気持ちにさせられる。

ほっと一息をついて珈琲を口に含む。

周りには誰もいない。自分ただ一人、公園のベンチに腰掛ける者がいるだけである。街の大通りの方ではクリスマスを祝う人々で混雑しているのだろうか。いつもより珈琲が苦い。


帰路について大通りを歩いてゆけば、逢瀬の人の群れが襲い来る。なんとも幸せそうな面をして闊歩する二人組達の隙間を縫って進む。まだ珈琲の苦みが口の中に残っている。


ドアを開け、部屋の中に入ると暗闇が優しく私を迎え入れた。温かな闇だ。そっと静かにドアを閉じ、部屋の奥へと進む。冷蔵庫から麦酒を取り出し、椅子に腰掛ける。


ああ、彼女はいつ返ってくるのだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る