虹と焼ける脳

吉木生姜

※ネタバレ注意※コンテスト用シナリオ要約

 高校2年の雅巳純武は、外傷の無い脳損傷が起きたという急死事件をニュースで知る。衆人環視の中で起きたその急死は他県でも同様の状況で4件確認され、いずれも警察は事件性は無いと発表していた。

 ニュースになった急死した人物は、クラスメイトの逢沢馬斗矢の兄だと判明した。純武と幼馴染の聖真と、クラスメイトの菜々子、足立は、馬斗矢から兄の急死を調べている刑事・井上に「俺は連続殺人事件だと考えている」と告げられた話を聞く。事件として捜査をしないと決めた上層部に隠れて捜査をするには、人手が足りないと井上は馬斗矢に捜査の協力を頼む。

 一方で、純武はニュースを見た時から既視感を抱いていた。馬斗矢から井上とのやり取りを聞いていると、その既視感は純武の幼少期に会った白い服の女が「脳だけ焼き殺すの」という言葉を口にした記憶によるものだと思い出す。井上と馬斗矢だけしか知らなかった脳の損傷は熱傷であるという情報と合致する記憶に、自分の過去と連続する急死に何らかの繋がりがあると感じた純武は友人4人と協力して事件の捜査をすることを決めた。

 捜査では馬斗矢の兄である宗一郎が生前唯一プライベートで連絡を取っていた、一と瑠璃の2人の学生が浮かび上がる。さらに、急死した5人と繋がりのある周防という女性が居ることも判明した。

 一同は人員を裂き、同日に一と瑠夏、周防に会いに行き、宗一郎との関係性を聞き出す。結局、一と瑠璃はただの友人という関係だと分かった。科学者の宗一郎と議論が出来る天才・一は好奇心から、次世代AIを開発した世界の彼方自動車会長の孫娘・瑠璃は宗一郎から開発の助言を貰った恩を返す為に自作のAIのチコパフを携え、それぞれ純武達に協力することを決める。

 周防は急死した5人と1年前に郡上市の心霊スポットと思しき場所で、ある実験を祠らしき建造物の近くで行い、そこで少女に会った。周防は自分達はその祠に祟られていると話し、井上達に保護を求め、急死事件がオカルトだという考えを述べたが、純武達は犯人は人間と判断した。加えて記憶の白い服の女が犯人だと仮定した。

 後日、井上とその部下の大里は、急死方法は不明だが近くに居るだけで急死を引き起こせるという仮説の下、急死した2件の事件現場周囲の監視カメラに共通する人物が映っていないかを周防を保護しつつ調べることに。学生7人はチーム名〈虹〉を作りその間に郡上市に赴き、祠を見つけて調べるグループと白い服の女について聞き込みをするグループに分かれた。

 祠を調べる純武達は、井上と同じく独自に急死事件を捜査している京都府警の雨宮、松木、私立探偵の阿久里と助手の諸崎と出会う。彼らと合流し祠を調べると触れると11年前にタイムスリップすることが分かり、そこで周防らと同じく一と松木、諸崎が少女と会った。

 井上達のカメラ映像のチェックと郡上市での聖真達の聞き込みにより、1年前から自分で購入した物以外が使えない体質を持つと考えられる高校2年の舞谷蓮子の存在が浮かび上がる。聖真の進言により井上達が蓮子の居場所を突き止めると、それは純武達が向かった祠があるキャンプ場だった。すでにそこに着いていた聖真は純武達に合流し逃げるように伝える。

 蓮子を脅威に感じた阿久里達は射殺を試みるも失敗し、諸崎と松木が急死してしまう。

 純武は聖真から蓮子の名前を聞くと彼女が昔同じ幼稚園に通う幼馴染であった事、11年前に彼女と一緒に園の遠足で祠を訪れた事、その時、共に6歳の純武と蓮子が祠に触れ10年後の蓮子に会った事を思い出す。これまでの事象から、過去にタイムスリップをして少女(6歳の蓮子)を見た人物が時を待たずして16、17歳の蓮子を見ると視覚情報の入る頭頂葉を熱傷させるという急死の仮説を立てた。

 一同は蓮子が謎の体質になったと同時に6歳の蓮子に実験した6人と、一、諸崎、松木と会った記憶が追加された可能性に気付く。結果、蓮子に殺意は無く、自分が謎の体質になった理由を知る為に記憶に追加された人物に会いに行っただけだったのだ。

 蓮子が9人の位置情報を知った理由に疑問は残ったが、蓮子から知らされたもう1つの同じ形状の祠を使い6歳の純武と蓮子がタイムスリップをしなかった歴史に書き換えることに成功する。

 事件に関わった面々は以前の記憶を失うが、瑠璃が危惧した〈虹〉の7人が出会わない歴史は純武の機転により回避された。その後何故か記憶も蘇る。

 純武はこの都合の良い結末に疑問を持ち、一と2人でこの世界がVRだと仮定すると全ての説明が出来るのではと議論を交わす。

 後にVR世界を構築すると自分達の世界と全く同じ世界が誕生した。そのVRで蓮子に起きた事象を解析した一は、自分の世界もVRかもしれないと思えた。だが、純武が口にしたこの世界がVRだろうと無かろうと「自分らしく生きるだけ」という言葉通り、彼が幸せを掴んだことに一は笑みを作る。

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