別れと誕生と愛
たいやき
第1話 愛のエッセンス
僕の名前は髙山ハルト。
P高校に通う普通の高校生だ。
成績はオール3。
クラスでは「陰キャ」と呼ばれている立ち位置だ。
僕の人生は荒波に羽をもがれたペンギンのようだ。
彼女もできた試しがない。
今日もいつもの通学路を帰っていたところだった。
天気は晴れ。
前日に雨が降ったからか、水たまりがあちこちにできている。
横を走り抜けるトラックが上げた水しぶきに太陽の光が反射してキラキラと光っている。
次の瞬間、ぼくの体はびしょ濡れになっていた。
不快感を感じながら、早く学校に行こうと歩き始めたその時だった。
視界の前にハンカチが現れた。
なんだ?と思う間もなく、ハンカチに続いて現れたのは絵にかいたような美女だった。
すると、「服濡れてんでしょ。貸してあげるから、ありがたく拭きなさい。」
明らかに、怒らせたら怖い美女に、僕は尻込みしてしまった。
「す、すみません。」
「お礼の一言も言えないの?」と言われてしまった。
なんといえばいいのかわからなくて、おどおどしていると、呆れたような目つきでこちらを睨んできた。
「もういいわよ。後で返して。」と言い放って行ってしまう。
「後でって、、、」
僕の声はすでに彼女の耳には届かないようだった。
不思議に思いながら、僕は、借りたハンカチで顔をふき、学校へ向かって、歩き始めた。
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