陰キャ女子の勝ち組平安ラブストーリー計画
玉井冨治
えぴそーど1
世界はどうしてこうも、最悪な色をしているのだろう。
『良い人』『善人』ばかりが馬鹿を見て、『悪い人』『嫌な人』ばかりが良い思いをする。
『善人が馬鹿を見るならば、善人のフリなんかしない方が良い』と大衆は思うだろう。
そして、それを実行するだろう。
社会とは薄汚い大人の薄汚い志向が蔓延るところだ。
私はそれを理解することができなければ、理解する気もしない。
と言うか、したくもない。
例え、私自身が馬鹿を見るとしても、不幸な目に遭うとしても、私は『善人な馬鹿』であるのでそれをやめようとは思えない。
「おい、花谷。出せよ。」
「…」
「聞こえてるのか?お前に話しかけてやってんだよ。花谷。」
「…」
来た来た。
私よりも何倍も頭の悪い、『悪人』達。
でも、人間としての頭の良さはさほど変わらないのかも知れない。
寧ろ、彼女等の方が優れていたとしたら私は本当に悲しい。
私、花谷詩那里は典型的な陰キャ女子で、典型的ないじめられっ子。
本当に、『悪人』達を相手になんかしたくないからいつも自分の気配をないものとしている。
話しかけられたのに無視をすると、今度はこぶしが降って来るから仕方なく返事はするようにしている。
「何?」
「『何?』だって。調子に乗ってるの?」
「まぁ良いわ。お金頂戴。」
「お金は持ってないから、あげられない。」
「はぁ?」
「馬鹿にしているの?」
お金は本当に持っていない。
確かに彼女等を馬鹿にしてはいるが、それとは関係なくお金は持っていない。
と言うより、学校へお金など持って来ていない。
使い道などないから、不必要に外へ持ち出す意味がない。
だから、現在お金など持っていない。
「馬鹿にしているかどうかは、想像に任せるけど、私はお金を持っていないからあげられるような金銭はない。」
「おい、見せろよ。」
「本当に持っていないか見てやるよ。」
そう言って、勝手に私の鞄を勝手に奪って見るんでしょ…。
はぁ、本当に嫌なんだよね。
こういうお馬鹿さん。
「何だよ。本当に使えねぇな。」
「マジで持ってねぇよ。こいつ。」
「貧乏か?」
『悪人』達は結局私の鞄を床に投げてブツブツ悪態をつきながら去って行った。
だから嫌なんだ。
こんな所、こんな環境、こんな社会、こんな世界。
学校が終わって、帰路を歩いていると空が大きく見えた。
ああ、こんなに空は大きく、広く、綺麗で、澄んでいて、終わりなど見えないのに。
社会はなぜこんなにも薄汚い大人達の最悪な、心が蔓延っているのだろうか。
誰もが善人ならば、どれだけ良いだろうと思ったことか。
でも、誰もが善人ならば、誰もが悪人に見えるのだろう。
結局社会とは、世界とは、人間とはそんなものなんだろう。
「ああ、何か良いことないかなぁ。」
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