第2話

○梶家・前の道(夜)

   ワンボックスカーがハザードランプを

   焚いて停車している。前に立つ智之の

   叔父、梶義昭(45)が寒そうにダウ

   ンの襟を立てる。


○梶家・玄関(夜)

   見送りに立つ梶綾(45)。

   靴を履き、パンパンのデイパックを背

   負いあげる梶智之(11)。


綾「忘れ物ない? 歯ブラシ持った? 義昭

 さんに失礼のないようにね」

智之「大丈夫。行ってくるね」 


   ドアを開け、出る智之。

一義「智之」

   来る梶一義(47)、マフラーを手に

   サンダルをつっかけ、智之のところに。  

   智之の首にマフラー巻き、整える一義。

   鬱陶しそうにする智之。

   

   一義、少し咳き込んで、

一義「襟元あたたかく、な」

知之「大丈夫? 寒暖差でまた……」

一義「暖かいぞ、カシミア入りだ。父さんの

 お気に入りだから、な……」

   再び咳き込み、胸から喘息の吸入器を

   取り出し、吸い込む一義。

   綾、かけ寄り、一義の背中をさする。

智之「……行くのやめようかな」

   咳を飲み込み、微笑み「いけいけ」と

   手を振る一義。

   「行きなさい」と笑む綾。

   智之、後ろ髪引かれ何度も振り返る。

   

○梶(義昭)家・

 リビングダイニング(早朝)

   従兄弟の梶秀一(12)と

   床にプラモデルを広げ、

   組み立てている智之。 

   その奥、固定電話で話す義昭。顔色が

   サッと青ざめる。


義昭「……兄貴が……」

智之「(胸騒ぎ)おじさん?」


   朝食の準備を整える義昭の妻、律子。

律子「ともちゃん、秀一、朝ごはん出来

 ますよ」

秀一「はーい」

智之・義昭「……」


○病院・入り口前ロータリー(朝)

   タクシー数台が駐停車している中、新

   たに横付けするワンボックス。ドアが

   開くと同時に、飛び出す智之。

義昭の声「(運転席から)トモちゃん!」

   待てず、院内に飛び込んでいく智之。


 【続く】

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