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暮れ時

はじめ

朝の空気。新鮮な空気。空は一面灰色の雲。

雨水で洗われた金木犀の匂いが教室にとどまり私の鼻腔へ入ってくる。

廊下はチャイムが静寂を追いやり騒音を迎え、開いた窓から冷気が流れ込み全体を包む。

そして耳に入る笑い声と共存した走る足音が一日の始まりを意味する。

教室を移動しなければならない気の重さが体にのしかかり息苦しい。

廊下は私を待っていたかのように風を呼び込み、私の頬に冷たい風があたる。

深呼吸すれば体中に空気が巡っていく。冬の感覚を思い出す。

やまない風はまるで歌っているかのように音を立て素早く廊下を抜けていく。

数日前までの夏を感じさせた生ぬるい風はいつの間にか姿を消していた。

風に乗った金木犀の香りが鼻をくすぐり季節の変わりを感じさせる。

冬が近づいている。少しの高揚感を抱きながら授業で使う教室へ足を踏み入れた。

チャイムが鳴り号令がかかると欠伸をしながらゆっくりと立ち上がるクラスメイトとともに、椅子が音を立てながら後ろへ下がる。

「起立、礼。お願いします。」

いつもと変わらない日常を残すべく私はノートの新しいページを開いた。

さあ今日の始まりだ。

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