妖術が存在する世界観、主人公に対して次第にドロドロな感情を抱くヤンデレヒロイン、主人公しか持たない妖術で進んでいく、妖術ダンジョン現代ファンタジー
三流木青二斎無一門
第1話
暗い洞窟の中、
湿った空気が肌にまとわりつき、耳には水滴が岩に当たる音しか聞こえない。
彼の目は暗闇の中で鋭く光る。
異能の力が肉体の奥からじわじわと湧き上がるのを感じていた。
「…小鬼か」
その時、通路の反対側から小鬼たちが姿を現した。
大小さまざまな彼らは、悪戯っぽい目を輝かせ、楽しげに近づいてくる。
小鬼の集団は、その小さな体躯からは想像つかないほどの妖気を放っていた。
九玖は彼らに視線を向け、心の奥から熱い力を引き出していく。
「ぐぎゃッ!ぎゃぎゃッ!」
気色の悪い体液を口から漏らしながら、獲物を認識する小鬼。
「来い」
彼の周囲に肉体から染み出すように、泥のような物質が現れ始める。
それは彼の意志を反映し、形を成していく。
次第に、獣の姿をした泥の塊が彼の足元に集まり、うねりながら膨れ上がってゆく。
(〈
突如、泥の獣たちが形を変え、目の前にいる小鬼たちに向かって突進する。
狼の獣たちが先頭を切り、獰猛な牙を剥き出しにしながら小鬼を追い詰める。
周囲が一気に緊張感に包まれ、洞窟の中には不穏な静寂が立ち込めた。
小鬼たちが恐れと混乱に目を見開く中、九玖は力を集中させ、泥を自在に操る。
「ぐぎゃッ!あ、っぎゃッ!!」
「ぶぎゅッ、ぶべぁッ!!」
その瞬間、泥から生まれた獣たちは彼の意思に呼応し、次々と小鬼を捕らえていく。目の前で繰り広げられる戦闘は獣と妖の壮絶な舞踏の如く、血生臭い妖気で満ち溢れていた。
「呑み
泥が獣のようにうねり、素早く小鬼たちに襲い掛かる。
「ぎ、ひぁッ!ぎゃあああッ!!」
彼らは逃げ場を失い、次々と捕まっていく。
九玖の肉体から溢れ出る力。
それはまるで生きているかのように獣たちを動かす。
そして、無慈悲に小鬼を飲み込んでいった。
「…駆除は終わったか」
静寂が戻った洞窟の中に立つ百鬼九玖。
足元には、力を失い、形を失った小鬼たちの影が散らばっていた。
彼の心には、この瞬間の勝利と共に、力がもたらす重さが静かに残っていた。
洞窟の中を進む百鬼九玖は、しばらく歩いた後、広い空間に出た。
薄暗い岩肌が周囲を取り囲み、長い影が広がっている。
彼はその場所に足を踏み入れ、周囲の様子を観察した。
岩の隙間から滴り落ちる水音が耳に心地よく響き、微かに感じる冷たい空気が緊張を和らげる。
「はぁ…(ようやく、次の階段が見えたな)」
彼の目はすぐに階段へと向けられた。
それは薄暗い洞窟の奥に続く、迷宮の底を示すものだった。
九玖は迷わず足を進め、階段の前に立ちすくんだ。
彼は、予め準備していた呪符を懐から取り出すと、階段の近くに張り付ける。
呪符は彼の手の中でじわりと温かさを帯び、力強い輝きを放ちながら、階段の壁に接着された。
(今際の際を潜り抜け、今世の道へと通じ給へ)
彼は心の中で呪文を唱え、その存在を認識させる。
呪符は彼の現状の位置を固定し、彼自身をこの迷宮から脱出させるための道しるべとなる。
次の瞬間、呪符から黒い煙が立ち昇り、周囲の空気が一変した。
煙は彼を包み込み、濃密な闇が彼の視界を覆う。
洞窟の広さが次第に消え、彼はその場に立っている感覚を失いかける。
混沌とした感覚の中、彼の身体は強い引力に引かれるように感じられた。
やがて、煙が晴れ始め、心地よい温かさを伴った光が彼の周りを包み込む。
視界がクリアになると、彼は自らの屋敷の蔵へと戻ったことに気づく。
「…戻って来たか、ふぅ」
親しみのある空間がそこに広がっている。
木の香りと静けさが彼を迎え、彼は一瞬安心感に包まれた。
百鬼九玖は静かに息を吐いた。
蔵の外へと出ると、既に外は明るかった。
本日も学校であり、彼は不眠不休での活動をする事となる。
しかし、彼の顔には疲れなど一切見当たらなかった。
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