元アイドル先輩とはじめるゲーム生活
桜井正宗
Wizard Online
1 - 雪先輩とオンラインゲーム
彼女を寝取られて一年後
「
付き合っていた彼女を寝取られて一年後。
俺は『雪先輩』という元トップアイドルと良好な関係を築いていた。そんな先輩に告白されていた。
俺の心の傷を癒やしてくれた先輩を俺は……。
▲▽
――三年の有名な先輩がアイドルを辞めた。
それは突然のニュースで学校どころか世間を
そんな俺も
先輩は明るくて可愛くて、あの
先輩が廊下を歩けば男たちの視線が釘付け。俺もそんなひとりだった。
そんな雪先輩は俺とは住む世界があまりに違い、手の届かない存在だと思っていた。
――けれど。
俺は授業をサボって屋上にいた。
魔法使いしか使えないMMORPG『
こんなこと校則違反すぎて先生たちに見つかれば、一発でアウトだ。けど、俺はどうしてもこのゲームがプレイしたかった。
今は超ボーナスタイム。
獲得経験値もドロップアイテム率も上昇中。必死にならないわけがなかった。
スペックギリギリの環境でプレイしていると、屋上の扉が開いた。
……やっべ、先生が来たのか!?
そう警戒したが、そこに現れたのは女子だった。しかもバッチリ見覚えのある顔だった。
「…………え、雪先輩?」
「え。こんな時間に利用者いたんだ。……君は?」
「俺は二年の
「ゲーム? わ、ノートパソコンを持ってるんだね。へえ、面白そう」
雪先輩は俺のゲームを見せて欲しいと大胆にも近づいてきた。……わ、良い匂いがする。なんだろう、甘くて頭がぼうっとする。
このままではどうかなりそうだったので、俺はノートパソコンの画面を開いた。
そこに現れる『
「これが俺のプレイしているMMORPG『
先輩は「知らない」と答えた。
当然か。今の時代、MMORPGをプレイしている人は結構減った。人口も減少しまくっているけど、でもそれでも別の形でオンラインゲームは続いている。FPSとかね。
俺はファンタジーが好きなので、この『
ド派手な魔法が最初から使えるし、経験値テーブルも優しめで時間のない社会人でも気軽に遊べる仕様になっていた。てか、課金アイテムでかなりブーストできるんだよな。
しかしそれでも高難易度ダンジョンを攻略するとなると、それなりに時間をかけて育成だとかレア装備、レアアイテムを集めていかねばならない。
基本ソロプレイである俺は、結構行き詰っていた。
「そうですか。よかったらやってみます?」
「うん。わたしね、アイドル業ばかりでゲームをほとんどやったことないから興味ある」
雪先輩は俺の隣に座り、肩が触れるギリギリの距離に接近。あまりに近くて、先輩の整った容姿が目の前にあって俺の心拍数は急激に上昇した。
す、すご……。肌がすべすべだ。きめ細かいとはこのことか。つか、顔小さすぎだろ。
先輩は小柄で本当に可愛らしい。こんな女子と毎日いられたら幸せだろうなぁと俺は思った。
「じゃあ、少しやってみます?」
「いいの? でも、やり方分からないんだよね」
「このゲーム、マウスでなくてもキャラクターが動かせるので……えっと[A]で左へ[W]で上へ[S]で下へ[D]右移動できます」
FPSと一緒の移動方法が可能だ。
[F1]~[F12]がスキルショートカット。アイテム一覧は[Q]。スペースキーを押すとチャット欄を出せたりする。
今はこんなもので大丈夫だろう。
「す、すごいね。覚えるの大変そう」
「慣れればそうでもないよ。コントローラー派の人もいるけど、俺はキーボードの方を好んで使っています」
「誉くんって凄いね。ねえねえ、わたしにゲームのこともっといろいろ教えてよ」
「い、いいですけど……」
って、名前で呼ばれた!?
マジか。信じられん。
雪先輩からそんな風に呼ばれるとか光栄すぎる。俺も名前で呼んでも――いや、呼んでいたな。みんなそう呼ぶから、俺も自然と“雪先輩”と呼んでしまっていた。だから、おあいこだな。
「ありがとう。すっごく興味あるから、がんばって覚えるね」
まさか先輩が『
それから俺は授業を忘れ、ずっとレクチャーを続けた。
先輩は真剣に俺の話を聞いてくれた。たまに指が触れたりして緊張したけど、それも次第に薄れていった。
今は“楽しい”という感情があふれ出そうだった。先輩とゲームの話題でこんなに盛り上がれるなんて想定もしていなかった出来事だ。
「――というわけで、魔法使いには『
「へえ、魔法使いってそんなに種類があるんだね」
「そうなんですよ~。奥が深いでしょう」
「この魔法使いを使ってなにすればいいの?」
「まずはレベリングですね。レベルを上げてキャラクターを強くする。それから装備を集めて強化。レアアイテムがあればどんどん強くなります」
「すごー。そういうアイテムってモンスターを倒すんだっけ」
「よくご存じで。強いモンスターを倒すとレアアイテムをドロップすることがあります。それを自らに装備したり露店で売ったり、用途は様々です。お金も大切なので不要な装備は高額で売った方がいいでしょうね」
そこで俺は説明を終えた。
気づけば十五時を回っていたからだ。
先輩と凄く時間はあっという間だな。授業なんか、いつまで経っても終わらないというのに――。
「本当にありがとう。わたし、家に帰ったらインストールしてみるよ!」
「分かりました。もし分からないことがあれば教えますよ」
「誉くんって優しいね。……あ、そうだ。連絡先教えて」
お、おいおいマジですか!
雪先輩の連絡先を知れるー!?
元とはいえアイドルだぞ。最近まで現役バリバリだったスーパーアイドルだぞ。そんな先輩と連絡を取り合えるとか……奇跡か?
し、信じられん
これは夢なのか。そうなのか!?
頬をつねってみたが、クソ痛かった。
「痛い……」
「夢じゃないよ~。はい、わたしの電話番号だよ」
ありがたく電話帳に登録した。それと『ライン』を登録。俺のリストに雪先輩が追加登録された。……感動だ。
こんな可愛い女子とお近づきになれるなんて。しかも憧れだった先輩。アイドル。……幸せすぎィ!
叫びたい。
今すぐにでもこの胸の内を叫びたい!
だけど、心の中で叫ぶことにした。
『イヤッホオオオオオオオオオオオオオオオオオウッ!!!』
雪先輩とゲーム生活スタートだ――!
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