食卓はいつも2人

水瀬彩乃

第1話 お姉ちゃんの部屋

まったくお姉ちゃんたら、1日中自分の部屋に引き籠もって絵を描いてる。

どんな絵を描いているかは見たことないけど、そんなに芸術!って感じじゃなさそうだし…


ガチャ。


「柚葉、今日出かけるから。」

「えっ珍しい。どこに?」

「秘密。」


口元に人差し指をあて、ニッと笑うお姉ちゃん。

手には大量のトートバッグ。


「何時くらいにもどってくるの?」

「さぁ…5時くらいかな。」

「そんなに長引くんだ。」

「久しぶりの売り場だから。」

「売り場?」


それ以上は何も答えず、一人でせっせと準備を進めていた。


「私は今日1日引き籠もってるからねー」

「おっけ。ちょっとでも出かけたら?」

「いやいや、お姉ちゃんと私分の家事で忙しいから。」


困ったお姉ちゃん。

はぁっとため息をついても、ケラケラしてる。


「じゃ。いってくる」

「いってらっしゃい。」


見送ってからが本番だ。

午前中に済ませておきたい家事を進め、テスト勉強もしておく。


「もぅ…本当に困る。」


姉妹ふたり暮らしってこんなにも大変なのか。

とまたため息。

姉が東京で一人暮らしすると言い出し、私も行く!と言ってしまった。

「じゃあ、姉妹仲良くね!美紅も柚葉に優しくするのよ!?絶対よ!?」

母の願いは叶うことなく…

私が姉に優しくしている。


「てか…お姉ちゃんどこ行ったんだろ?」


多分半年ぶりくらいの外出だと思う。

どんだけ引き籠もってんだって感じで、週に1回は怒鳴っている。


「そうだ、お姉ちゃんの部屋の片付けでもしようかな。」


せかせかと、リビングの奥にあるお姉ちゃんの部屋のドアを開ける。


むわっ


熱気がすごい。

そして何故か負のオーラも感じる。

画材の匂いもなかなかだ。


「うー…仕方ない!やってやるかぁ~」


あんまり動かしてしまうと怒られてしまうので、慎重にやっていく。


過去に描いた絵がそこら辺に投げられている。

いるのかいらないのか…


「あっこれ」


無造作に置かれている絵の中に、金の額縁に入っている絵を見つけた。

笑顔が素敵な女性の似顔絵だ。


「こ これ私じゃん!」


よく見たら、そんな気もする。

ぱっちり二重が特徴なのをしっかり掴めていて、毎日30分掛けているヘアケアを入念に施された髪の毛も鮮明に描かれている。  


「お姉ちゃんって…絵、上手かったんだ。」


それなのに、私ー…


ハッとして、1年前のことを思い出した。

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