おくすり飲まなきゃ
水瀬彩乃
【前編】おくすり飲まなきゃ
朝、うるさい目覚まし時計と目が合う。
もう少しだけ黙ってくれないかな…と思いつつも、無理矢理体を起こして止める。
8:00だ。
洗面台の鏡に写る私はどことなく寂しい顔をしているだろう。
まぁ、いつものことなんだけど。
身だしなみを整え、対して可愛くもないブレザーの制服を着て、お下がりの黒いパーカーを身にまとう。
夏なのに、まだ早い。なんて言わせない。
学校について、何か変わっていることと言えば席。
隣の席の人はまだ来ていなくて、誰だろうと思ってた。別に好きな人もいないし、特別仲いい友達もいないから、もうどうだっていい。
「ここからここまでがテスト範囲です。」
教師の声を聞かないように、手で耳を塞ぐ。
本当に無駄な抵抗だ。
早く終われ、とだけ願う。
そんなことを考えるのも、もうすぐ終わりそうな気がしていた。
家から帰ってからは、母に勘付かれないように自室に籠もる。
市販薬でいいのかな。
前お母さんに連れて行ってもらった病院から処方されたお薬を飲んでも、何にも変わらなかった。
お小遣いを前借りして、ドラッグストアで買った市販薬。箱が3つ…
何錠くらいがいいのか分からないけど、とりあえず全部飲んでおけば空を飛べるよね。
「申し訳ないことしちゃったかも。」
水をたっぷりと飲み込む。
唇の隙間から水が溢れるのなんか、気にしない。
「ごめんね。来世はもっといい子に生まれるから」
笑顔って素敵だ。
涙が勝手に出てくるんだから。
私は3分後、宙に浮いた気がした。
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