不運な男の異世界転生〜転生したら魔界皇子になっていた

柳の下

第1話 望まない転生

世の中は理不尽と不条理で出来ていて本人の選択によって人生は進む。


その選択は正しかろうとミスであろうと不条理にも流れていく。


人生ってのはそんなもんだから楽しくよく考えずにいや、たまには考えて面白おかしく生きていくそれが俺のモットーだ。


中学1年生の時に起きたいじめのせいで中学は不登校になった。

親や学校の先生でさえも信じられなかった僕を救ったのが親友と何とか信じてもらおうとした1人の恩師と両親の努力だった。


友達が教えてくれた深夜アニメやゲームのおかげで笑うことも無く部屋に閉じこもり憂鬱な僕を元気にしてくれた。


俺の面倒を見てくれた先生は担当が社会科だったので俺が好きだった歴史を教えてくれた。

そのおかげで歴史や民俗学に興味を持って色々な知識を得ることが出来た。


不登校児童は普通の高校にあんまり行けず市外の高校に進学するも情報の楽しさをしり短大に入った。


高校は校則が厳しく馴染めなかった期間もあったが3年から高校生活は逆転してクラスの人気者になると僕は資格を取り情報系短大に入学した。


短大は最高に楽しかった、いや、楽しすぎたのだ。


厳しい環境から自由すぎる生活に足を踏み入れてしまったせいで何一つちゃんと学べなかった。


卒業だけは何とかできた。

だが学業を疎かにして資格も取らず遊んでいた者の末路は知っての通り、就活に失敗してしまい鬱になってしまった。


俺は何度も転職したが長く続かなかった。

上京したら変わるかもって思ったが良い知り合いはできても仕事は上手くいかずダラダラと地元で生きてきた。


色んな仕事をまた転々としたがやっぱり病んでいてもしょうがないぞと言い聞かせても心はいつか病む。


この状況を治すために精神科医に診てもらったら鬱病と発達障害と言われてしまった。


まぁ、転職した先の何個かはメンタルブレイカーでも雇っているのかみたいな職場ばかりだったから仕方ないなと諦めた。


俺には仲のいい家族と友人と触れ合いネットで知り合い参加したオフ会で仲良くなった女子と付き合い始めた。

症状も良くなり新しい勤め先では人間関係も良く趣味の格闘技やキャンプを満喫して彼女との関係も送れて順風満帆な生活だったがそんな生活って長く続かないようになっているのだ。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

季節は夏、友達達と大人数でキャンプパーティーをすることになりキャンプ所の下見にいざ!と思ったが参加者はゼロ人。


困り果てたから途中、偶然であった中学の先輩とキャンプ場の下見に行った。


本当は最近家族になった義理の妹、彼女、地元の先輩2人、妹みたいな幼馴染達で下見に行くはずだった。


だが、不幸なことに妹は学校かなにかの用事で名古屋に行き、彼女は急遽、実家の横浜に半日で帰ることになり、先輩らは腰痛になり動けず、幼馴染は風邪をひいてしまい他の友達も無理そうだ。


「ツイてないなぁ……まぁ1人で行くかァ」


俺の地元は愛知の東にある地域でキャンプ場は静岡県西部にある山の近くだそうで車で1時間半のところだからまぁまぁ大丈夫だろ。

俺は実家から浜松方面の方に車を走らせていると道の途中に地元の2個上の先輩がいた。


最近は仲良くは無いが一応、挨拶をする。


「先輩!お久しぶりです!」


「…………」


元気よく先輩に挨拶しても無視されてしまった。

なんて先輩なんでしょうかと心の中で怒って通り過ぎようとしたら突然、俺の車の方に先輩が近づてきた。


「ああ、○○か。どこかいくのか?」


今日のドライブの目的を伝え一緒に行かないかと先輩を誘った。

この先輩は最近よく俺からの誘いを断るから最近、あんまり得意じゃないけどひとりぼっちは寂しいからな、仕方ない一人で行くかと思っていると


「いいぞ」

「えっ!?いいんですか!?」

予想外の返事に思わず狂喜乱舞したのは言うまでもなかった。

目的地までの先輩はいつにも増して饒舌だった。

偶然にも俺らがいくキャンプ場の近くに先輩が好きなクワガタの群生地があるらしく見て欲しいとの事だった。


お易い御用と車を走らせること車で1時間半、途中で浜名湖の景色を見たりコンビニで飯を食べたりとしながら目的日に到着した。


「結構な山なんだなぁ…… 思っていたより山だぜここ」

「そうだな、山も暑いからシーズンなのに人は居ないな」

先輩は呟くとたしかにシーズンなのに人の姿はまばらだった。そういう事もあるだろう。

俺の周りには迫ってきそうな勢いの山々と緑の巨大な木々がそびえる樹海が見えた。

初めての場所に来たせいか何か変な予感がする。

不思議と俺の身に良くないことが起きるんじゃないかという第6感ってやつだろうか?


気にせず歩いていると先輩が俺を呼んだ。


「○○!ミヤマクワガタを見つけたから手伝ってくれ!」

「了解です!今行きますね!」


俺は直ぐに返事して先輩のところに向かおうとした時に俺の足が掬われた。

なんだ!?足元を見ると落とし穴だった。

腰まで穴にハマってしまって上手く抜け出せない。

「ハッハッハッハッ!!!」

穴にハマっている俺を先輩は笑う。正気かこいつ?

「先輩、近くにいるから助けてくださいよ!」

「……………」

力いっぱい叫んだが先輩は答えなかった。

否、答えもせず穴に落ちた俺を見下していた。


「先輩??」


その時、俺はさっき感じた第6感は本物へと変わった。

今の先輩からは殺気と悪意をとても感じた。


俺は格闘技を嗜んでいるから分かるがこれはおそらく俺を○害すための罠だろうと瞬時に察してしまった。

先輩は殺気を消すのが苦手だったのになぜ気づかなかったのか。自分を責めてしまう。

こんな簡単な罠にハマるなんて俺も不抜けていたんだろうな。

激しい後悔の念とこれから怒るであろう出来事を想像すると恐怖に包まれていたが今は脱出するしかない。


だが目の前の人の形をした悪魔は許さなかった。


「なぁ○○、28歳の誕生日おめでとう!そしてさようならだ!」

「なんだよ突然、こんなことするなんておかしいだろ!!!」


誕生日は2ヶ月前に過ぎたんだけど心の中で叫んだがそんなツッコミを入れている余裕はない。

俺の前には命を奪おうとしてくる先輩が迫ってきている。先輩は俺の口に猿轡をはめる。


「おい、やめっ……」


穴にハマり身動き出来ないし声も出ない。

刹那、俺の頭に良く研いだであろう斧が振りかぶった。

ゴン ゴン ドガッ ガシュッ


「ガハッ!」

斧が振り下ろしたのは頭ではなく右肩だった。

「ウグッ……」

痛みで呻き声しかでない。狂気に満ちた瞳でずっと俺の体に向かって斧を振り下ろしてくる。


「しねえ!しねえ!しねえ!!」


何度も狂気に満ちた顔と笑みで先輩は叫びながら俺の体を斧で打ち付けた。

ゴン、ゴン、ゴン、ゴン……

痛いと何度、叫んだがもはや無駄だ。

ここで俺は先輩に殺される。俺が一体先輩に何をしたっていうのか

「先輩、なnで、おrこ…ろs……と……」


今にも消え入りそうな声で半狂乱の先輩に問いかけた。


先輩は俺の飛び血で紅く染まり狂気に満ちた顔で悪魔のように答えた。


「お前が俺の愛しの××を奪ったからだよ!お前には彼女がいるくせに!」


××は僕と仲の良い女友達の名前だ。

その女友達とは仲がいいが別に恋人関係では無いのだが先輩からは僕とその女友達と恋人関係に思われて逆恨みされていた節が確かにあった。

××は幼馴染の女の子ってだけでこれっぽちの恋愛感情は無い。


ああ、なんだ……先輩のアホみたいな勘違いで殺され俺は死ぬのか……。


息も絶え絶えの俺は死にたくないと脳内で叫んでいるが声はもう出ない。



「せnぱィ……ぜん……ぅ……かん……ga」


ゴォォン



遠のく意識の中で僕を押えつけて後頭部に斧のトドメの一撃を振り下ろした。



こうして俺は28歳のあまりにも凄惨すぎる最期を遂げたのだった。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


俺が殺されて何時間かたったのだろうか?


目の前は死んだにしては少し明るいものが見える。

走馬灯か?いや、昔の黒歴史やムフフな歴史とかでは無い。なにか、温かい光が僕を包んでいる。

もしかして、救急隊かレスキューか誰かが助けてくたのか?


それにしても眩しいなこの光、目を開けてみるか。


目を開けるとそこにはメイド服姿の女性が30人以上は居る。産婆さんや看護師みたいな服装の女性がいる。

見た目は20代後半ぐらいであろう。

よく見てみるとここにいる女性はみな、角が生えたり悪魔みたいなしっぽや翼が生えたりしている。

もちろん、人間と同じような感じの人も多くいるが何か違う。強い違和感を覚えた。


「お産まれになったのですね……!」

「はい!皇后陛下!本当におめでとうございます」

気品に溢れながらも喜びに満ちた若い女性の声がした。

その気品溢れる女性に看護師長であろう魔族?の女性が答える。


「はい、立派な御子様、皇太子殿下でございます!」

「男子であるか!ドローテアよ本当によくやったな」

「ありがとうございます、あなた……」

俺が男であることを喜ぶ声は威厳のあるが若い感じの男の声の主は恐らく俺の父であろう、父であるその男は母である女性の頭を撫でていた。

しかし、皇太子殿下?俺は生まれも育ちも普通の一般市民だけども。

それにしてもこの体なにか小さいな、もしかして!?


俺の嫌な予想が当たってしまう。

そう、これはもしかしたらと思っていると先程の男の声の主を見る。

いかにも皇帝やら国王が身に纏っていそうな豪華な軍服と紅のマントを翻した長い銀髪の若い男が俺を抱き抱えて叫んだ。


「皆の者よく聞け!皇后ドロテーアは今ここに朕、魔界大帝 リリューク・ドラグ=バール・ドラガルフォンの後継者となる子を産んだ!この皇子の名はアンリマン・ドラグ=デモス・ドラガルフォンである!朕の正統たる後継者にして帝国の皇太子なるぞ!」


リリュークと名乗った男はドロテーアと呼ばれた龍のような2つの角が生えた銀髪赤眼の女性の額にキスをした。

リリュークの歓声に部屋にいた侍女とリリュークの側近たち恐らくこの部屋にいるこの国の高官全員が歓声を上げた。


おいおい、転生モノは何度かアニメやな○うでみたがまさか実体験するとは思ってなかったぞ。


「うそだぁ!!!!」


僕は心の中で叫んだ。あまりにも非現実的現象に脳が追いついていない。

先輩に惨めに殺されたはずの俺は魔界大帝の皇太子として転生してしまったのである。

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