第4話 なにこいつ




 ゲームがメチャクチャに面白いのでずっとやっていたいのだが、するとカナナナくんに「代わってよずるいよ!」と言われるし、マムロ先生にも「病状とは関係なく大人げない、と……」とか言われるので渋々代わる。


 その代わりに手に取るのは漫画と週刊誌に小説である。今日も続きを読もうと本棚に向かい、そこで見慣れぬ冊子を発見した。


『月刊魑魅』そう白文字で書かれた題字の下には墨筆で河童が描かれており、胡座を組んでじっとこちらを見つめていた。


「……こんな月刊誌、あったっけ?」


 魑魅なんておどろおどろしい題名、一度聞けば忘れるはずがないと思うが、しかし開く前に「む、今日であったか」とメルニウスに横から取られた。おい。


「文句を言うな客将の身分で。我はこの出版社に投書をしていてな、今度こそ皇帝の意見に耳を貸すのだろう。見よ、この表紙を」

「河童だけど?」

「cappa? 否。これは剃髪の罪を受けた罪人の姿よ。自らの罪を受け止め、我の意見を大々的に何故載っていないのだぁ!」


 そう言ってメルニウスが雑誌に叫んだ。それに対しカナナナくんが、「それはね、そもそも届いていないからだよ! メルニウスお姉ちゃんの手紙、途中で焼かれてるんだから!」とゲームをしながら言った。


「何だと!? 聞いていないぞマムロ! 皇帝の文書を断りもなく焼き捨てるとはどういう了見だ!」

「え、私は知りませんよ。というか、そう思い込んでいる人の手紙なんて外に出せるわけがないでしょう」

「カンドランド王朝の系譜を継ぐ国はまだ生きているんだけどね、だからこそ表沙汰には出来ないんだってさ!」

「むう……口惜しいことだ。今の世は皇帝を望まぬか」

「ああ、一応押し込められたって自覚はあるのね」


 普段の態度からは考えられないようなことだが、彼女自身、自体を正しく認識しているらしい。その上で大人しくしているのだから本気でまともな皇帝だね。


「しかし焼き捨てられるのは不満だぞ。今は世の平穏のため身を隠してはいるが、これでは皇帝の助けが必要な臣民の声を聞き届けられぬではないか」

「いっそ儂の部下にプロパガンダの新聞でも配らせるかのう? 現体制に不満な奴等は大勢いる。それこそ王朝を受け継ぐ奴等じゃ」

「うへえきな臭。やるんだったら俺がゲームやり尽くしてからにしてくれよ」


 言いながら、俺はメルニウスの手から雑誌を取り、目次を見た。そう言えばここに来てから読んでいるのは漫画ばかりだ。そろそろ世間の情報を収集しなければならないだろう。


 そう思って、なんとなく目を通した俺の目は、しかし驚愕に見開かれた。


「兵庫ジャガーズが、三年連続優勝……!? 俺は夢でも見てるのか……?」

「夢じゃありませんよ! ジャガーズは今黄金期を築き上げているのです! 助っ人外国人と三年計画での若手育成がドンピシャでハマりましてね! もう余程の事じゃ揺れませんよ!」

「うわ。なんですかマムロ先生」


 何か急に触手が興奮しだした。うねうねと十本の腕を生やして歓喜のダンスを踊っている。精神衛生上悪いぞ。


「今年でエースと四番がFA権取得って書いてありますが」

「猛豹魂を持つ若豹達がそんな事で抜けますか! 生涯ジャガーズ宣言を出してくれるに決まってます!」

「えーそうかなあ。どっちも出身地が広島だから帰りたがってるみたいだよ。メジャーにも行きたいらしいし、最近じゃ球団の人よりもそっちの人と……」

「うっそでしょうカナナナくん!?」

「ほんとー」


 何やらショックを受けているマムロ先生を横目に、俺の目はそんな記事よりもずっと奇妙なものを見つけた。一見してゴシップばかりだが、そのゴシップの内容が問題である、


「『不老長寿には水素水銀が効く!』……『彼にバレない、動物園でユニコーンと仲良くする裏技』……なにこれ」

「クソ下らんゴシップじゃろ」

「そうじゃなく、なんでオカルトチックな話題が当然の顔をして紙面に載ってるのかって話だよ」

「あれ、マムロ先生。カワセミさんに記憶障害はありましたっけえ?」

「加筆しておきます」


 また病気扱いされたが、しかし、ああ、そう言えばマムロ先生が言ってたっけな。『元から世界には魔法も怪物も居たのです。表向きには隠されていましたがね』と。


 つまり今は隠されていない。俺が異世界に行っていた十年間に、地球は立派なファンタジー世界に変貌してしまったらしい。


 しかし、紙面に現れているとおり、世界は大層な変化を成したものの、大衆を変化させることはなかったらしいな。どこそこの大臣が奴隷を買っていただの、とある大企業では人体実験が行われているだの、書かれているのはゴシップばかりである。


「『女性必見! 絶対にバレない若返り魔法三カ年計画』……これ女性向け雑誌? 世俗だなあ。世俗が過ぎるぜ。平和な証っちゃ証だが」

「故にこそ意識の啓蒙が必要なのだ。我は国家安寧の計を原稿用紙100枚に纏め、これこそが皇帝の手腕と訴えたが、まさか男女の密会方法に紙面を取られるなど……!」

「そもそも投稿する雑誌が間違ってんじゃねえの?」


 こんな雑誌、名に反して三流も良いところだろう。四コマ漫画も扱っているあるあるネタが全く分からなくてつまらねえし、クロスワードパズルも意味不明だわ。


 ……ただ、少しだけ気になった記事があった。『異世界との門、年内に設置予定』という、少しは真面目な記事である。


『魔都東京にて設置されし大魔法陣』だの、『魔物流入の懸念は』だの、『魔王と呼称されし存在の危険性』だの、記事内では決して肯定的には扱われていないようであるが、それでもこちらの世界と異世界との交流は始まっているらしい。


 何よりも、掲載された白黒の写真の中に、見たくもないのを見つけてしまった。


「……久しぶりだな、お姫様」


 豪奢なドレスに身を包んだ、笑みの一つも浮かべない女を見て、俺はそう呟いた。




 翌日のことである。


 気が変わったので、今日からは真面目に情報収集に取り組んでいくとする。そうなると頼れるのはヨビソン爺さんになるが、発言がどうにも信用できないのでカナナナくんにも同席して貰う。


「今日はレアチーズケーキですよう」とみそぎさんが出してくれたケーキを紅茶と共に喫しながら、午後三時、俺の調査は始まった。


「そもそも、ここ何なの? どこにあるわけ?」

「東京湾に作られた人工島の地下じゃよ。警備の厳重さからして脱出も侵入も容易ではない。そもそも存在すら秘匿とされているからのう、第九異能病院は」

「元々はヨビソンお爺ちゃんのためだけに作られた監獄だったんだけどね! 次にメルニウスお姉ちゃんでその次にぼく、そしてオワリお姉ちゃん! ぼくが入ったときに病院になったんだよ!」


「ほれ」と虚空からヨビソン爺さんが新聞を出す。俺の家にも届いていた全国紙だ。日付は2027年の7月17日、大見出しには『ロトゥム氏死亡』『連合軍 欧州各地を制圧』などと出ており、カラー写真で瓦礫の街に国連の旗が立っている。


「死んでねえじゃん」

「正確には『殺せなかった』じゃ。儂は魔道を極め天へと至った。故に魔王よ。そういったものを異世界ではそう呼ぶのだろう?」

「うーんどうだろ。どいつも殺すのには苦労したけどな」

「ほう!」


 ずい、とヨビソン爺さんが顔を近づけてきた。鷲鼻と口を手で覆って、碧色の目が爛々と輝く。


「参考にはしたが、協力も干渉も何もしなかったからのう。気になってはいたのじゃ。世に名高き十の魔王が次々と打ち倒されていったと。勇者とは名ばかり、どうせあいつらのこと、共倒れしおったかと思っていたが、カナナナ、誠か?」

「カワセミお兄ちゃんは凄いよ! だってぼくが『見ちゃいけない』って思うんだもん!」

「ま、俺の武勇伝は置いておくとして……」


 新聞の記述には、様々な興味深い事柄が書かれている。たとえば『連合魔法騎士部隊』だの『人工太陽ミサイル』だの『反転術式拡散兵器』だの、眉唾を超えて物語染みた単語が当然のように記述されていた。


「『七年前に突如として』……。そこからかい? もしかして、全部ヨビソン爺さんのせいか」

「うんにゃ。儂は三代目よ。最初から一員ではあったがの」

「最初の人も二人目も、どっちもお爺ちゃんが仕立て上げたんでしょ! 可哀想な、熱意に溢れた、歴史に残らない人達だよ!」

「火は絶えず燻っていた。それだけよ。魔法に超能力に人外にと、押し留めるには限界があったのじゃ。まあ、儂が矢面に立つとは思ってもみなかったが。歳が歳じゃし」


 ふうん、と俺はレアチーズケーキを口に含む。この爺さんの立場が何であれ、世の流れとして異常は弾けようとしていたってあっ美味えなこれ本当に。しっかりと身が重いのが嬉しい。クッキー層の食感が滑らかな生地と相まって、ともすれば重すぎるところを軽やかなものに仕立て上げている。紅茶とも良く合うな。


「そうか、レモンか……。甘さの中に柑橘系の……。あーすっごいありがたい。嬉しい。泣きたくなってきた……」

「勇者様なら豪奢を極めていそうなものだがのう。本気で泣きそうになっているとは哀れじゃ。儂のも食うか?」

「クッキー生地しか残ってねえのを寄越すな偏食爺ちゃん」

「じゃあぼくが貰うね!」


 カナナナくんは何時も美味しそうに食べるなあ。爺さんの唾が付いてるってのに。まあそこんところはもう俺も気にならなくなっちまったが。


 というか、何の話をしていたんだっけ? ああそうだ。戦争の話だ。七年前に終戦した戦争が、地球を現代ファンタジーにしやがったって話だな。


「まあ、語るべき事は少ないぞ。今まで目に入らなかったものが見られるようになり、人々はそれを受け入れざるを得なくなった。率先して受け入れ、その先を求めたものも多かったがの」

「メルニウスお姉ちゃんが発掘されたのも、この瓦礫の中だったんだ! ローマの遺跡のその下の地下遺跡!」

「その結果が、『魔都東京』か」


 俺はつい昨日新しく本棚に加わった、『じゃんじゃん東京マップ』を開く。新宿から渋谷にかけての一帯が様変わりしていやがる。


 夥しく高層ビルが並び、その下に雑然とした低層建築が蠢く。再開発というレベルではない。一旦更地になったところに、ぐちゃぐちゃと建物と人を掻き集めたような有様だ。


「係争地だったからの。理由は……何だったかの? 最初は単なる雑魚共の縄張り争いだったはずが、何時しかミサイルで全部吹き飛んで、その後も発展と荒廃を繰り返す始末よ」

「ぼくが一度行ってみたいところだ! 地球で一番危険なところ! 今度、異世界との門が開く場所だね!」

「原発みてえな扱いされてんな。まあ、無理もないが」


 というか、それでも野球はやってんのね。『東京ドームで野球観戦!』とポップな字体で紹介する記事を読みながらそう思った。戦争したって割には随分と呑気な、浮かれた雰囲気が雑誌全体から感じられる。意外と人類は逞しくやっているらしい。


 と、そこでマムロ先生が「皆さん、久しぶりの運動ですよ」とメルニウスを連れて現れた。運動? えっ、外に出ていいわけ?


「やったあ! ぼくボール持ってくるね!」

「おー、ようやく晴れたかの。というか、今は何月だったかのう?」

「四月ですよう、ヨビソンさん」


 そう言って、みそぎさんがオワリちゃんの車椅子を引きながら現れる。いつも通りの包帯姿、真っ白な病院着姿である。それでも「……久しぶり」と少し嬉しそうにしていた。


「へー、ここ監禁施設じゃねえんだ。俺はてっきり二度と日の目を拝めぬものと」

「何を言いますか。日光浴は精神疾患を軽減させるのに必要な事です。上司との交渉には難儀しましたがね」

「ねえ爺さん、マムロ先生ってどこまで本気なの?」

「知らん。そもそもこんな触手の化け物など未知の生物じゃ」


 言いながら、ラウンジを抜けて放射状に伸びた個室の一端へと向かう。そこには俺が入ってきたときの鉄扉があり、マムロ先生が傍のパネルを操作すれば、物々しい音を立てて重厚な扉が開いた。その後にまた扉。更に扉。都合三つの扉を潜り抜けて、ようやく俺は外に出た。


 何日ぶりの外界だろうか。眩しく、思わず目を細くする。潮の匂いがする。青空は高く、雲の一つもない。前の前に広がるのは、小さな島の景観だった。


 切り立った崖が遠くに見える。船着き場はあるが、船は係留していない。そこを上ってすぐに整備された平地があり、そこが足下に繋がっていた。


 少し進んで振り返れば、小さな丘に横穴を開けるようにして鉄扉がある。今出てきた地下施設の入口である。船着き場と広場、そして鉄扉と、後は平地の脇に一件の小さな家屋があるばかりで、他には何も無い。


「やっほー!」とカナナナくんが一番に駆け出して、走りながらボールを投げた。転々と蛍光色のゴムボールが転がって、静かに止まった。


「……ふわあ」


 ぐい、と欠伸をしながら身体を伸ばす。剣を下げずに空を見上げるなど、随分久しぶりだった。見れば、オワリちゃんは広場の脇の木陰で空を見上げ、ヨビソン爺さんは芝生に寝転んでぐだぐだしている。メルニウスはあちこちを歩きながらスケッチブックに何かを書き付けているが、絵でも書いているのだろうか。


「……のどかだなあ」

「のどかですねえ、旦那ぁ」

「うん、誰?」


 するりと音もなく近付いてきた女に、牽制するように視線を飛ばす。暗殺者の身のこなし。懐には剣が二つ。そして厚手のフードで窺い知れないが、人殺しの目を浮かべていることだろう。


「見抜きやしたかい。流石はここにぶち込まれるだけはありまさあ。ええ、ええ。俺の名は鎌鼬。或いは陽炎。或いは尊神尊氏とでも呼んで下せえ」

「じゃあ尊神尊氏さんよ」

「あっやっぱなし! その名前だと嬢ちゃんに殺されちまあ。流石は旦那だ的確に地雷を選びやがるんだもんおっかねえなあ怖えよひひひ」


 何だこいつ。マムロ先生に目を向けても触手を伸ばしているだけで表情分からねえし、みそぎさんはオワリちゃんと一緒に木陰に居て、こちらの視線に気付いて手を振ってくるだけだ。不審者ではないのだろうか。


「へえ、へえ。俺が何者か。いやあ何者か聞きてえのは俺の方なんですがね旦那。他はぶち込まれるに足るものだって、ええ明確な罪人はあの魔王だけですがね、それでも妥当といやあ妥当ですよ。しかし旦那の情報は何にも入ってこねえんだもん声かけた俺の勇気をちっとは褒めて欲しいもんですがね、ええ」

「暗殺者の割にはお喋りだな。お前が俺達の看守ってわけかい? その二刀も首狩るにはぴったりだ」

「へえ! 分かりますかいやあ流石ですぜ旦那。そう俺もこの性格が災いしちまって里にも街にも居られなくなって終いにゃ果ての果てに終身雇用ですよ。こりゃ見方によっちゃ俺もぶち込まれたと見るべきかな?」


「アラタメ・カラミ……絡改と言いやす」と、女はフードを取って俺に手を伸ばした。斑模様の髪色の、どす黒い目をした女である。首筋は華奢で、必要な肉を必要な分だけ維持していやがる修練者。


 俺はその手を取って握手をした。すると彼女は嬉しそうに笑った。


「手ぇ伸ばして握手されたのは久しぶりだ! 俺ぁ旦那をすっかり気に入っちまいましたよだからこそ気になるなあ何でそんな気の良い旦那がここにぶち込まれたんですとても不思議だなあ」

「俺は異世界から帰ってきた元勇者様さ。帰ってきた途端、何の説明も受けずにここに輸送されたんだ」

「へえ! そりゃ傑作だ。何が傑作ってそんな旦那がお上に大人しく従ったことが一番の傑作ですぜおかしいなあ不思議だなあ今だって俺のこと殺せるくせにひひひ」

「疲れてたからなあ。正直今も疲れてるぜ。お前と会話するのは疲れる」


 どうやら監獄の中の六人はまともだったらしい。いや、こいつが単に飛びっ切りの異常者なだけかも知れないが、とにかくこういう奴と会話するのは何の得にもならぬものだ。人殺しと相対するのはもう飽き飽きなのである。


「旦那ぁ」と声を掛けてくるのを横目に、ぶらぶら歩きながらスケッチをしていたメルニウスに声を掛ける。彼女は鉛筆で草木や山陵の形を正確な形でスケッチしており、珍しく無言で歩んでいた。


「帝国百科事典の執筆は順調かい?」

「その作成も急務だが、生憎、これは我の趣味だ。文武に優れたる我ではあるが、芸術とは一概に優れると言えるものではなく、なればこその趣味よ。美とは格を付けるべきものではないからな」

「言う割に上手いじゃん」

「ほんとですねえ流石は皇帝様」


「む」とメルニウスがスケッチブックから顔を上げた。胡乱な目でアラタメを見つめ、「何だ、道化師か」と再び顔を下げた。


「何だ、我の客将を気に入ったか。貴様らしい。だが、剣は抜くなよ。貴様の性根は理解しているが、命を無駄にすることはないぞ」

「へえへえ存じておりますとも。俺よりも強い皇帝様より強い勇者様に喧嘩を売るわけがねえでしょうへへへ」

「その手には乗らぬぞ。道化は道化故、その口を閉じろとは言わぬが、獅子が飛べぬ事をわざわざ忠言する必要もない」


「もっとも」とメルニウスはくるりと鉛筆を回し、剣のように構えた。


「その技の深み、興味はある。どうだ? 戯れに打ち合うというのも」

「やだよ。もう命を奪わない剣なんて忘れちまったし、お前とやり合うのは骨が折れそうだ」

「皮の一枚も破れそうにないがな」

「慣用句だよ。というか、みそぎさんが呼んでるぞ」

「ありゃ、もう時間ですかい」


 見れば、みそぎさんは鉄扉の前でこちらに手を振っている。駆け回るカナナナくんをマムロ先生が追いかけ、ひょいと触手の一本で捕まえていた。


「案外短かったな」

「外に出せるってこと自体がおかしい話なんですがね、あの触手先生は一体何者なんでしょうかねえ? 俺ぁそういう権力だの政治だのにはとことん疎いもんでして、ええ。触手に政治を語らせるってのも変な話じゃありますがね」

「政治ねえ」


 ぷらぷらとアラタメに手を振って、鉄扉の前に集まる。また物々しい音を立てて扉が開く。入り、閉じるその瞬間、遠くでアラタメが言った。


「旦那ぁ、近頃きな臭いから気ぃ付けるんですよお」


 あんな奴に忠告を貰うとはおかしな事である。俺は笑って手を振った。





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