戦闘狂の異世界記録

茜音

開幕

 私は、神話生物連中フルボッコと人殺しが趣味のただの人間。



 戦闘は好きで、戦って死ぬならいいと思ってるし、格上や正体不明の相手と交戦するのは楽しい。

 そのせいか、知り合いからは戦闘狂バトルジャンキー狂戦士バーサーカーと揶揄される。


 否定はしねーけど。


 14歳。ダンサー。性別中性。名前は影星かげほし。過去は記憶にないし、本名なんて覚えてない。

 まーでも、知らねーなら知らねーでいいと思うんよな。そんなん気にしても時間の無駄やろ?


「……暇やな」


 まあ私の個人情報なんかは一旦置いといて。

 殺戮あそびに出かけたいのは山々やけど…な…


「こんな暑い日に外出る気は流石に出ねーわ」


 神格でも活発化してるんか?勘弁してくれ。負ける気はしねーけど暑いのは嫌だ。

 同じく、殺しに行きたいけど暑いのは嫌だ。つかその後がめんどくせー事になる。何で警察と追いかけっこなんてしなきゃならねーんだよ、わざわざ街中でライフルなんてぶっぱなして。しかも炎天下で。


 追われる度に相手殺してるしいい加減飽きてくれてもいいと思うんやけどな……戦うのは好きやけど、雑魚にはあんま興味ねーんよ。

 頭かてーな……


 その時、スマホから聞き慣れた通知音がした。私はテーブルに置きっぱなしだったスマホを取るために、ソファから降りる。


 ロックを解除してみれば、案の定、21歳のネトゲ廃人引きこもりの恩人からだった。


『今日暑いけどゲームやらね?俺の家で』


 3人のメッセージグループ。私、ネトゲ廃人こと黒乃くろの、それから……


『分かった』


 無色むしきだ。


 こいつらとは、色々あって結構遊んでる。黒乃は私の恩人で、影星って名前は黒乃に貰った。無色は私と黒乃で助けた。

 ……いや、助けたって言うのはちょっと違うんか?頼まれた訳じゃねーから自己満って言うのか、これ。


 ま、どっちでもいいな。


『私も行くわ、飲み物は?』

『特にないからなんか買ってきて』

『呼ぶ側が用意しとけや』


 この暑い中、家出るのだけでもちょっと渋るのに要求するなんて20超えた大人のする事じゃねーだろ。


『えー俺外出たくない無理』

『お前の家が明日東京湾に浮かぶが問題ないか?』

『せめて琵琶湖にしてくれね?俺まだ滋賀行ったことねぇからさ』

『ポジティブだなお前』


 こいつらのやり取り、ボケとツッコミが1-1でいるから見ててちょうどいいんよな。


『じゃ飲み物は黒乃が宅配かなんかで頼めば?』

『それでもいいな』

『お前ら金払いたくなさすぎだろ』

『いやいや私だってまだ14だし無色も16やろ?ゲームで金稼いでるお前が払って当然やろ』


 私は14歳のダンサー。ただし職業じゃない。踊れはするけど仕事としてやった事は一回もない。それより人殺した方が金奪えるし楽しめるしで一石二鳥だ。


 無色はまあ……環境あんま良くなくてな。それに知らん奴らとの交流はあんましねーようにって約束させた。その日暮らしの裏路地育ちとなれば、本人も人間に対していい思い出もねーよな。


 それに対して黒乃は、ネトゲ廃人で引きこもりではあるがニートじゃない。働いて……るのか?わかんねーけどゲーム創って売ってるし、まあそこそこ金は稼いでるっぽいんだよな。


 つまり、この場で金払えんのは黒乃しかいない。


『おーまあ分からないでもないその理論』

『じゃ、今から荷物持ってお前の家行くわ』

『はいよ』


 スマホの画面を1度落として、外に出かける準備をする。


 上は着物っぽい服に、服の下の前はミニスカート、後ろは着物の延長みたいに伸ばしてある。これが私の出かける服だ。

 ガーターソックスを履いて、次に持ち物。

 ガンケースに愛用のライフルとマシンガン──バレット・モデル82とMG42を入れて、バッグにはゲーム機とスマホ。

 その2つを持って、白いブーツを履く。キル性能を上げるために、特別に仕込みナイフを施されたもの。通称<影星シューズ>。


 別に武装してるわけじゃない。これが私のいつものスタイルだ。


 重くはない。巻き込まれ率と、謎の戦闘部屋での報酬で勝手に私が強くなった。筋力も俊敏性も体力も、一般人よりは強い自信がある。……いや、強い自信しかない。


 一応誰か来た時用に手紙残しとこ。私の連絡先知ってるやつあんまいねーけど、知り合いとかは何人かいるからな。

 適当なメモを破り、ボールペンで一言。


『出掛け中』


 よし、こんなんでいいやろ。

 下駄箱の戸棚に貼って、扉を開ける。鍵……はかけといた方がいいか。ベタだけど鍵は植木鉢の下に隠しといて、っと。


 そして、家の敷地外に1歩出た瞬間。


「……あ?」


 強烈な目眩に襲われた。


 一瞬、またどっか知らない部屋に閉じ込められたりするんか?と思ったけど、それにしては、嫌な、予感、が…………


 困惑している間にも、視界は白に覆われ──



 色が戻った時、私は見覚えのない場所に立っていた。


─────────────────────────

「あとがき」

ここまでお読みくださってありがとうございます。

カクヨムでは初めまして、茜音と申します。

主に愛と絆と仲間を重んじています。どうぞよろしくお願い致します。

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