第4話
閉店後の店の中で僕は使用済みの食器をせっせと洗っていた。
「ご主人、今日も色々な人が店に来ましたね。いやー商売繁盛だ。」
「そうだな。」
声の方へ返事をする。すると、そいては黒い頭を擦り寄せてきた。
「おい、クロ、お前は大して働いてないだろう…。」
そう。声の持ち主は大きな二足歩行の、そして人語を話す黒猫である。
「いいじゃんいいじゃん。吾輩がいるからみんな良い「夢」を見れるんですよ。」
仕方なく頭を撫でてやる。
「そうだな。嬉しそうな顔をして帰る客を見るのは嬉しいからね。」
僕たちはいわゆる魔法使いだ。この店を経営し、深刻な悩みを抱えていそうな客を見分け、その人を使い魔のクロの力で過去へ戻し、どうにかして元気になってもらうという慈善事業をしている。大抵の客が見る「夢」は高校時代、つまり一般的に青春と言われる日々のものだ。人間は知らぬ間に高校時代がとても大切な思い出、そして人生の大きな要素となっているのかもしれない。人はその尊さを失って初めて気付くのだろう。
最後のコップを戸棚に戻し、電気を消す。
「帰るぞ。」
空には人の夢ほどの数の星が美しく瞬いていた。
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