手と手

くろき

ポケットの中には

私のこれまでの人生は、振り返りたくないような辛いことの方が多かった。楽しかったと自信を持って言える出来事はぱっとは思い浮かばない。


でも、私にはポケットの中に常に味方がいた。それだけで十分だった。ポケットの中の「私の味方」は時々で全然違うものだった。


小学生の頃は小さいグミ。

辛い時はみんなに隠れてグミを食べられることにしていた。今思うと可愛い。


中学生の頃はゲーム機。

ゲームの世界では人気者だった。友達がいないから上手くなっただけなのにね。


高校生の頃は音楽プレーヤー。

みんなとは違う、自分しか知らないマイナーな曲を聴いている自分は他の人とは違う次元にいる、みたいなことを考えていたっけ。そういう奴はむしろ沢山いるミーハー人間だよ、気づかなかったのかな。あの頃の自分に言ってやりたいな。


大学生の頃は…。大学生の頃はポケットには何も入っていなかった。誰とも関わらないから味方すらいらなかったんだよね。あの頃は何をしていたかも覚えていないな。辛い事がないからか感情が動く事も何も無かった。


こうして並べてみると、自分は結構真っ当に育っているんだと実感する。

非行にも走らず、よく淡々と生きて来れたもんだよ。我ながら頑張った。お疲れ様。


最近は、この調子でだらだら生きていこうかなと思っている。そして、生きるのに飽きたらそれはそれで良いかなとも思っている。


きっと何とかなるよね、人生って。何とかならなくても続いていくものだしね。


そんな最近の私の一番の味方は、彼氏の手。どこに行くにも一緒なの。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

手と手 くろき @sss_black

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る