三話 再結成に向けて
『そうすけ!』
どうしたんだ、
『俺、ようやく魔法が使えるようになってきたんだ!』
凄いじゃないか、さすが勇者は違うな!
『あはは、教えてくれる人達がみんな上手だからかな!良かったら
いや、俺はやめておくよ。
『そう言わずにさ、俺は蒼佑と一緒に冒険がしたいんだ、キミがいてくれたら助かるし』
そうか、そう言われると嬉しいな。
『どうやら、この世界には魔法が使えない地域があって、そこでは魔法とは別の文明があるらしいんだ。もし
それもいいな。でも俺は……
『分かってるよ、でも考えてみてくれないか?』
あぁ、すまない
『ソウスケェッッ!!』
「ッッ!」
どでかい怒鳴り声に叩き起こされ、勢い良く上体を起こす。どうやら少し前にあった出来事を夢として見ていたようだ。
寝ぼけ眼を擦り、ムクリと上体を起こす。
「よーやく起きたかっ!ったく、随分ぐっすり眠ってやがってよぉ、ほれ」
寝ぼけている俺を半目で睨みながら、カバンに入っている保存食を渡してきたのは黒髪の青年だ。その顔に懐かしさを覚えながら、右手でそれを受け取る。
「あぁ、悪いなロック」
受け取った保存食である干し肉をかじりながら出発の準備をはじめる。あまりゆっくりしてはいられないんだったな。
「しっかし久しぶりに会ったと思ったら帝国から逃げるだなんて、一体何やらかしたんだ?」
「やらかしたと言うかだな、うーん……どっちかと言うと巻き込まれた…?」
「なんで俺に聞くんだよ」
召喚されて数日後、幸多たちが戦うための訓練をしている間、俺だけ個別で呼び出されることとなり、とんでもない暴論で命を狙われることになったのだ。
" 先代勇者と同じ名前をした勇者の友人が、戦いを前にして我が身可愛さに逃げようとした ''
自国が召喚した勇者の仲間がそんな醜態を晒したなどという醜聞がたたないように、あの皇帝は俺を殺そうとしたのだ。
いつの間にか過去を思い出していた俺は、その場所から全力で逃げ出して城を出て、記憶を頼りに帝都にあるビジランテユニオンに向かいロックと再会した後、すぐさま帝国を出ることにした。
その時に彼は何も言わずに着いてきてくれたので、感謝しきりだ。
彼にはちゃんとした説明もないまま連れてきてしまったので、その説明とこれからの目的を決めることにした。
「それで、あいつらを捜してもう一度あのパーティに戻るってわけか」
「そういうことだ。だからまずはフラシア王国に行こうと思ってな」
帝国から離れる為に歩きつつそう告げると、話を聞いていたロックが顔を顰めていた。
「どうした?」
「……いや、お前にそんなフザけたことをしやがるとはな、前々からクソみてぇな
そう、現イルギシュ帝国皇帝は、暗君とされている。
先代皇帝は優秀で、善政を敷き、民たちの事をよく考えていた。だが十数年ほど前に病に伏して、後に亡くなってしまう。
そして現皇帝が引き継いだ後、貴族と皇族が一緒になって私腹を肥やす事ばかりで民のことは後回し、先代勇者の時の魔族との戦争時も、力を貸さなかったことで他国からの印象も悪い。
それでも孤立していないのは、他国よりも長く続いた歴史と、それによって積み上げられた国力が故だろう。
「何より、お前だって仮にも勇者なんだ、そんなのに喧嘩を売るってことは、国ごと滅ぼされても文句は言えねぇ」
「まぁそこまでの事にならないよう願うよ。ただ残されたアイツらが心配だけど」
「今更心配したとこでだろ。何かあったらその時対処するしかねぇよ」
とにかく今出来ることは先代勇者パーティの再結成だ。
然る後、現勇者パーティを陰ながらサポート、そしてイルギシュ帝国との敵対関係を解消する。
「勇者の友人で、俺自身も勇者って……もう訳わかんねぇ…」
「はっはっはッ!それはそれでおもしれぇじゃねぇか!それに、またソウスケと暴れられるんならこんなに楽しいことねぇよ!」
大笑いしながら俺との再会を喜んでくれる、先代勇者パーティのオフェンス担当、ロック。
今から五年前に俺を召喚した国、フラシア王国に向かい、今後の協力の要請とパーティの再結成を行うことにした。
しかし帝国に残してきた三人が心配でもある、きっと大丈夫だろうが……
そんなことを考えていると、ふと後方から何者かが近付いてきた。ロックは同じタイミングで足を止める。
「なぁロック、誰か道にでも迷ったのかな」
「かもしれねぇな。いったいなんでこんな獣道で、
俺の言葉に、ロックがおどけたように返す。まぁ、何者もクソもないのだけれどね。
「見つけたぞ、ソウスケとやら。皇帝陛下の命だ、ここで死んでもらう」
そう言ったのは、節々や急所を隠したような、軽めの鎧を装備した騎士だ。いわゆる暗部と言われる組織の一員であり、俺の命を狙う相手でもある。
彼は直剣を手にこちらと向き合う。そして、それに続いて俺たちを取り囲むように、五人、六人と騎士たちが表れる。
「テメェら、俺の仲間に舐めたことするじゃねぇか」
「きっ貴様、まさか……!」
俺たちのやりとりを見ていたロックの言葉に、騎士がロックを睨んで返す。しかし、彼の姿を見た騎士は、顔色を変えて一歩後退る。
「とりあえず、やるか」
そんなロックの言葉に、俺が先駆けて一歩踏み出す。得物はないが、武器ならある。
俺は右手をググッと握り込んで、死ねと言ってきた騎士のその土手っ腹に、貫くような一撃を叩き込んだ。
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