家の離れで下宿をしている超絶美少年との同棲同然の生活は迷惑です!
手塚エマ
第1話 中田家の事情
中田家では、朝食だけは必ず家族全員で食べる約束になっている。
父親の出勤時刻に合わせて、午前六時に起床する。父や娘が一人、また一人と、ダイニングテーブルの自分の椅子に腰かける。
早起きの京子は洗顔も済ませ、制服のブラウスにスカートと、カーディガン。食事が済んだらブラウスにリボンを結び、ジャケットを着る。
高一でも化粧をしてくるクラスメイトもいたりするが、京子は食卓に着く前に、さっと眉だけ書いている。
歯磨きは食事の後にしたいのだが、朝食のあとの洗面所は、同時刻に同じ高校に登校する下宿人、
高良は中田家の敷地内にある離れを借りて住んでいる。
両親はプロの社交ダンスプレイヤー。コンテストで世界中を飛び回るため、日本での滞在期間が、ほとんどないと言ってもいい。
京子と高良の母親は、大学の同期生で親友だ。
いつも家で一人にさせる息子を案じる彼女のために、京子の母が離れでの下宿を思いつく。
高良の両親は、京子の両親の目の届く範囲で生活できると、喜んで頼み出た。
そういった大人の事情の提案を、高良はあっさり承諾した。
以来、高良の下宿生活は中学一年の時から三年間続いている。
「おはようございます」
早起きが苦手な高良は、パジャマ代わりのよれたTシャツとスウェット姿で母屋に来た。
生まれつき色素の薄い栗色の髪は寝ぐせでボサボサ。
大抵、腹の辺りをぼりぼり掻きつつ、中田家のダイニングテーブルの端に着席する。
「おはよう」
と、返事をするのは、京子の父と母だけだ。
京子は自分の席にいて、ずっと携帯をいじっている。高良は京子の右隣に、当たり前のように座っている。
キッチンに立つ母親は、高良の分の朝食だけでなく、弁当も作っている。
猫舌の高良の味噌汁から注いでやり、次に父親、次に京子、最後に自分の分をよそうのだ。食卓にすべての皿が揃う頃、高良の味噌汁は程よい感じに冷めている。
「いただきます」
高良は両手をパンと合わせて、一礼してから箸を取る。両親は、そんな高良を微笑ましく見守りながら、食事を始める。
高良は最初に味噌汁をすすり、綺麗な箸使いで焼き鮭を食べ、白飯をかっ食らう。
京子も三年前なら、それでも良かった。
離れの広さは六畳二間。台所と風呂とトイレがついている。
台所はあるのだが、まだ小学生の高良に料理をさせるのは危ないと、京子の母親が言い出した。
だから、食事は中田家の母屋で一緒に食べる話になり、下宿代の他に食費も払ってもらっている。
京子もそれに対して何の不満もなかったはずが、三年経ったら不満だらけになっていた。
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