第12話 暗い洞窟の中を進む! 〜白崎なな

(本当に、何がそんなに楽しいんだ……)



 細々とした火で、洞窟の中を照らしている。明るさに欠ける洞窟の中に、足を踏み入れる。2人の地面を踏み鳴らす音が、こだまする。息をする音でさえ、響き渡るほど静かで不気味さを演出している。


 俺は、自分の歩幅の半分で歩くルナに合わせてスピードを落とした。チラリと横を見ると、ルナは洞窟の中の様子に釘付けになっている。大きな銀の瞳をさらに開いて、目を輝かせている。

 

 薄暗い洞窟内は、明かり以外に何もなくただまっすぐに伸びた道を進む。最奥まで到達したのか、高い壁に挟まれてしまった。


 入り口が出てくるわけでもなく、閉鎖的空間が現れた。その中に入り中央に立った。地震のように大きく地面が揺れて、揺れがおさまったと思ったら今度は壁が歪み始める。

そして大きな音を立てて、今通ってきた道周りと同じような壁で閉じられてしまった。


戻ることも進むことも出来なくなってしまった。上には同じ石畳の天井が広がっていて、上下がひっくり返っても同じ景色になりそうだ。



「ん〜、こういうのはね! ……えいっ」



 ルナは徐に、壁を触り始めた。すぐそれが、隠し扉を探す仕草なんだと分かる。



(いやいや、そんな簡単に開くわけ……)


 ザリッと音を立てて、ルナの触っていた石が大きく動き壁に別の道ができた。あり得ないと俺は、目を白黒させた。



「開かないと思った?」


「うん。もう絶対、あそこで野垂れ死ぬ運命だと思ったよ」



 ルナは、両手を腰に当てて自慢げにした。そして、すぐにその明かりの灯らない真っ暗な道に視線を動かす。開いた道の方に行き、懐中電灯でぐるりと辺りを照らしてみた。



 墨で塗られた暗さは、手元の懐中電灯なんかでは到底照らせなかった。隣に立つルナは、視線で “どうする?” と訴えてきている。出てきた道から流れてくる風によって、ルナの肩に付かない短い髪がサラッと動く。


 もう後戻りもできない状況に、俺は腹を括った。ルナの手をとって、今度は俺がリードする。



「行くんだろ?」

 


 ルナは、少し余裕そうな俺を見てムッとした表情をする。ぎゅと強めに握り返してきて、俺より先に一歩闇の中に足を踏み入れた。なんだかその負けん気の強さに、笑えてくる。



「え、なに? 馬鹿にしてるの?」



 そう言って、繋ぐ手をグイグイっと引っ張ってくる。その少し幼い行動に、最初のツンッとした印象が少し薄れてくる。

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