第10話 ルナは、強いのか? -白崎なな
ルナは、自信満々な表情をして俺のことを見る。可愛らしい笑みに、周りの禍々しさを忘れてしまいそうになる。ルナの周りが、瞳の中から光が溢れるようにぱぁっと明るくなったように感じた。
「ん〜! 私こう見えて強いんだってばぁ!」
彼女の声から、かなりの自信があるのがわかる。
なぜこんなにもこんな場所で、そんなに嬉々としていられるのかは理解はできない。しかしきっと、自分の強さを自負していそうなのでこれから起こることに思いを馳せると楽しみになるのだろう。
俺は、少しネクタイの結び目に指を入れて左右に振って緩める。上を向いて、瞳を閉じてひと呼吸つく。瞳を開くと、ガラスのような輝きを放つ星と目が合う。
ルナは、小動物のような小さな歩幅で忙しなく足を動かして俺を置いていく。数歩で、その隙間も簡単に埋まる。近づいた俺にルナは、弾むような声で鼻歌を歌い始めた。
(おいおい、呑気にも程があるだろ)
そんな気分にはもちろんなれないが、注意をしてしまいルナのやる気を削いでしまうわけにはいかない。突然、花畑が現れて周りには金と銀の蝶が舞い踊っている。黄色や桃色の花々は、まとわりつく闇の雲を跳ね除けている。
蝶の戯れも儚く、俺たちが花畑に足を踏み込んだ瞬間に星屑のようになり消えていく。花畑の中央がガクンと下に落ち窪み、その穴に吸い込まれるように落ちていく。
手を伸ばしても、ルナには触れられず離れていってしまう。
さらには花々は、黒くなり朽ちて消えていき周りが暗黒に包まれる。手を伸ばしても何もなく、ただ暗い空間に突き落とされた。
落ちていく風を感じ、かなりの距離を落ちていく。
鈍い痛みがドンっと身体に走った。手探りで周りを触り、今いる場所を確認しようとした。地面はざらりとした砂の指通りを感じ、周りには何も触れられずいた。
「ルナ?」
一緒に落ちてきたのは、明白なのに声すらも聞こえてこない。自分の声も響いてこないので、かなり開放的な空間なのかもしれない。途方に暮れるしかなくなってしまい、腕を組んで頭を捻り考える。
「いやぁ〜! 落ちる落ちる!」
ルナの悲鳴が上から聞こえてきた。落ちた時、かなりの衝撃を感じたので俺は受け止めようと考えた。
「こっちにいるよ! 落ちると痛いから気をつけて」
周りが真っ暗で声だけが頼りで、ルナの場所を聞こえてくる声で探った。しかし、ルナの周りに先ほどの金と銀の蝶が現れて照らしてくれる。輝く蝶は、ルナの肩に止まりバタバタと羽を動かして重力に逆らっている。そのおかげで、ゆっくりと降りてきたルナを受け止めた。
受け止めたルナを地面に下ろして、もらったライトを使い周りを照らして詮索をする。どうやら先ほどの山の洞窟に道が繋がっているようで、一本道が伸びている。
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