すれ違い 蒼ちゃんside

「本気で好きです。蒼ちゃんのことばっかり考えてるし、心から蒼ちゃんと付き合いたいと思っています」


 真面目な顔で話すと思えば、学年で一番モテる女の子の冗談。


 毎月告白してくる人の数は十人は必ずとか。


 三ヶ月前くらいにアイドルにいそうな顔立ちの先輩に告白されて断ったことも、その時好きだった人が隣のクラスのクールなイケメンで知られてる男の子なのも有名だから知ってる。


 最近、友達と恋バナして盛り上がっているのは見たことあるけど、その相手が私なんて考えたこともない、片想いなことは分かっているから。


 別に、私はある程度告白されたこともあるし、一回だけ女の子と付き合ったこともある。


 まあまあ顔は良いだろうし、少しモテている自覚はあるし。


 けれど、恋愛対象が男子の君と付き合うことは無理だって諦めてた。


 君の幸せを願って、勝手に失恋していた、一年前には、既に。


 なのに、今更変なことしてこないでよ。


 好きな気持ちはもう消えたのにな。


「え? いつから? 何で? 藍沢さんが?」


 困惑と冷静な思考から出てきた言葉は疑問の言葉だけ。


 君-藍沢さん-は可愛く首をかしげて話してくれる。


「二ヶ月前からかな? 蒼ちゃんが私の気持ちに寄り添って話してくれたりいつも助けてくれたりするのに惹かれたんだ。蒼ちゃんのことが、好きです」


 そんな真面目な言葉に思考が停止する。


 藍沢さんは大体好きだって言ってた人とかと付き合ってる。


 けど、その後振られていたり、その前に噂で脈なしを知ったりとか。


 理由を聞けば、可愛いからか、好きではない人ばっかに好かれ、好きな人と付き合えてもモテすぎて振られることもあったとか。


「・・・突然言われても困るよね。自分から告白するの初めてで、上手く伝えられないみたいでごめんね」


 私がずっと固まっているからか、君は悲しそうな顔をして話してくる。


 初めて告白って・・・そっか、好きな人に告白されるかその前に上手くいかなくて告白される過程がなかったんだ・・・。


 なら、なんで私には告白したの?


「えっと、女の子好きになったし、前に女の子を好きになったときは、告白できずに諦めちゃったから、その後悔もあってかな」


 私の心声が漏れていたらしく、君は今にも泣きそうな寂しそうな声で答えてくれる。


 君の真剣な想いに答えないといけない。


 分かっているけど、なんて言えばいいのかわかんない。


「あのさ、私のことを好きになってくれて本当にありがとう。私も一年前は藍沢さんのことが好きだったんだ」


 君の顔が強張る。


 そして、君は辛そうな悲しそうな複雑そうな顔。


「私は完全に恋愛対象が女の子だけだから、藍沢さんが男の子と付き合っていたのをみて諦めちゃったんだ」


 アイドル並みの君の顔が今までに見たことのない複雑そうな顔をしている。


「それでね、今は私は藍沢さんの友達の灯里さんが好きなんだ」


 君の顔がきょとんとして、今にも泣きそうな顔になる。


「その様子だと、たぶん私の恋も叶わないよね。」


 君は無言で頷くかのように睨んで来る。


「ごめんね。」


 君の顔をもうぐちゃぐちゃにしたくないよ。


「最初は中途半端な思いだけど、藍沢さんのこと好きだったことあるし、また好きになれるかもって、藍沢さん付き合おうかと思ったんだけど、藍沢さんには勝手に幸せになっていて欲しい。今は、推しと同じ感覚なんだ。今ね、私が幸せにしたい、好きな人は灯里さんなんだ。本当にごめんね。告白してくれてありがとう」


 すれ違ってごめんね。


 そして、君を好きになれて私は幸せだったよ。


 三ヶ月もすれば私のことなんて忘れてるだろう。


 勝手に幸せになっていてよね、藍沢さん。


 そう思いながらここを離れようと足を動かす。


「あのっ、告白を聞いてくれてありがとう。青ちゃん、幸せになってね。好きにならせてくれてありがとう」


 今にも泣きだしそうな顔で言うの。


 ずるいなとか思いつつ、そういうとこが相澤さんがモテる原因なんだろうなとか、私が好きになったところなんだよなとか思う。


 私は藍沢さんの幸せを心から願っています。


 そう言ってその場をたった。

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