何が出来るか、何がしたいか

あさしん

真っ白な目覚め

「…ここは?」


辺り一面には白い壁。一つの無機質なドア。

そして、それ以外には何一つない奇妙な部屋に彼女はいた。


「私の部屋じゃない?でもどうして?」


彼女は記憶を巡らせたが、何の覚えもない。


昨日は自分の部屋で寝たはずだ、ならなぜ自分はここにいるのか。

気づかずに誘拐でもされたのか?いや、あり得ない。部屋の鍵は閉めていた。

どちらにしても寝ている間に部屋に誰か来たら気づくはずだし、

気付かなかったとしても自分が何の拘束もされてないのはおかしい。


結局、考えていても仕方がないと思い、ドアを開けて部屋を出ることにした。

部屋を出ると、同じように白く長い廊下だった。しかし、違う点として、

出てきた部屋のあった方にはいくつかのドアが同じように並んでいた。

そして、向かい側にはいくつかの窓があった。

彼女の背丈より高い所にあったため外の様子はろくに見えなかったものの、まるで絵画の様に美しい青い空、その中では作り物の様に大きく白い雲が動いていた。

真っ白い部屋にいるはずなのに一段と輝いている空模様に心を奪われそうになったが、彼女の不安と困惑を搔き消したのはほんの一瞬であった。


「早く帰ろう、出口を探さないと…」


左にはドアが二つあったが突き当たりは行き止まり、右はドアは一つだけだが

突き当たりの右に廊下が続いていた。先に右の廊下を覗くことにした彼女が顔を出してみると、ドアと窓は一つもなかったが、エレベーターがあった。

しかし、エレベーターと分かったのは横に押しボタンがあったからである。

視界にまず映ったのは、おおよそ普通は見ることのない荘厳な模様の描かれた鉄格子の扉であったのだ。


そして、その向こうには一人の中年男性が鉄パイプのイスに座っていた。

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