魔王を討伐し伝説冒険者パーティー団長は金が尽き冒険者になる。
さい
第1話
「おい、ここを通りたきゃあ、金とその着てるもん置いてくんだな」
まずい……。
非常にまずいことになった。
カルタは現在、とんでもない窮地に立たされているのであった!!
右を見ても後ろを見ても前を見てもどこかしこには山賊。
(くそおお〜!! ついてね〜全くよおおお!!)
内心泣いているが、なんとか相手に悟られないようにカルタは歯を食いしばり我慢する。
「ははあん、あまり俺を舐めない方がいいぜ。なんたってなッ」
剣を鞘から抜き、目の前にいる盗賊に剣先を向けた。
「俺はドラゴンを一人でぶった斬ることができるほどの冒険者だからなッ!!」
「いやいや、それは無理があるぞ。足ブルブル震えてるって!!」
「ふうん、こ、これはすぐに攻撃を避けれるようにわざとやってんだッ」
(あたりめーだろー。怖くないはずねえよおおお。あー、やばい。どうしよう、こんなところで持ち物全てなくなるとか……だ、誰か助けてくれー)
と、その時だった。
「おい、そこどいてくれ」
あん?
と、カルタの目の前にいる盗賊が後ろを振り向くとそこには一人の冒険者が立っていた。
「なんだお前……ぶっ殺されてえのかあああ!!」
「くそキモっ、つばめちゃくちゃ飛ばしてくるよこの人……あのなあ、ぶっ殺されるのは……」
その男は盗賊の腹部に目掛けて拳をぶつけた。
「お前じゃアアア──ッ」
盗賊は白目になり、いきおいよく空に向かって吹き飛んだ。
バタン、と地面に倒れる盗賊。
幸い地面が砂だったため、よかったが、石だったのなら間違いなく潰れていたことだろう。
残り三人の盗賊たちが剣を抜き、男に向かって走り出した。
ふん、と男は微かに笑みを浮かべ、
「いいぜ、やってやんよ」
肩にかけられていた鞘から、持ち手が龍の首の形をした剣を抜き出した。
「全く、お前らみてェな生き方してるやつにロクなやつはいねェんだよなあ」
男は横に剣を振ると、三人の盗賊たちの動きが止まり、次の瞬間、
腹部を真っ二つに斬られ、その場に赤い体液を噴き出しながら倒れた。
(……なッ、なんて剣術を……。一振りで三人を斬るなんて……。てか、この人、どこかで見たことがある気が……)
「お前」
「は、はい!?」
ビクビクと震え出すカルタ。
(お、俺も殺される感じじゃないよな……)
男はカルタの顔を見る。
金髪にくるくるとした天然パーマなその男は、冒険者にしてはどこかボンヤリと怠けた顔をして、また、どこか寂しげな目をしていた。
(あっ、ももも、もしかして……レオスじゃ……)
「助けてやったんだ、飯奢れ」
「は、はい?」
「こっちは三日も何も食わずに歩き続けてんだよ。ッたく、なかなか次の街に着きやしねェ……」
ドクドク、とカルタの心臓が速くなっていく。
恐怖ではない。
興奮によるものだ。
周りの音はおろか、自身の声すらも自身の耳には届かないほどに心臓の鼓動が早くなっていく。
「もしかして、あなたはレオスさんじゃ……」
「ん、俺のこと知ってんのか?」
「あっ、当たり前ですよ!!」
レオス・ロード。
五年前に魔王を討伐した伝説の冒険者パーティー『黄金の冒険者団』の団長だ。
魔王を倒し、報酬を受け取った後は姿を消していたという。
(い、生きていたんだ……)
カルタはてっきり、みな死んでしまったのだと思っていた。
カルタだけではない。
地上最強の生物である魔王を倒したのだ、彼らは世界にとって脅威の存在。
消されて当然の存在。
「街はどこだ? 早く飯が食いてェんだ」
「は、はい……ここから一番近い街は俺が来た『サンドタウン』ですけど」
「よし、案外しろッ」
(あれ、なんか奢る感じになってない!? けどまあ、助けてもらったし……何よりも、あのレオスさんにご飯を奢れるんだ、よしとしよう!!)
これが、カルタとレオスとの出会いだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます