有名ダンジョン配信者の従妹に忘れ物を届けたら、なぜか俺まで有名になってしまった件

渡り鳥いつか

プロローグ

「よし、掃除はこれで終わり!少し休憩したらお昼にしようかなぁ」


 とある日曜日。俺、瀬川颯太せがわそうたは平日疎かにしがちだった掃除を終え、体を預けるようにソファへ腰を下ろした。普段働いてるとついつい掃除機とかかけ忘れちゃうからなぁ。できる時にやっとかないと、あっという間にホコリで部屋を埋め尽くす自信がある。いやマジで。男なんてそんなもんですよ、たぶん。


「っと、忘れない内に」


 近くにあったリモコンを手に取り、テレビ画面にourtubeを表示させる。今日は毎回楽しみにしているチャンネルの配信日だ。しかも、そのチャンネルとは、俺の従妹いとこである綾瀬優里あやせゆうりこと【Ayu】が投稿しているチャンネルなのである!


 かわいい親戚の勇姿は目に焼き付けておきたい。そんな思いで彼女の配信を見始めたが、これが予想以上に面白かった。つかハマった。なので今では数少ない楽しみの一つになっている。


「今日はどんなことするのかなぁ」


 逸る気持ちを抑えながら、一秒たりとも見逃さないよう配信待機画面を表示しておく。


「おっし、これでオーケー……ん?」


 ふと、リビングの机にポツンと置いてあるポシェットが目が入った。先ほど話した優里はとある事情で俺と同居しているのだが、その彼女がいつも使用しているポシェットが、なぜかそこに置きっぱなしになっている。


「アイツ、今日は忘れて出かけちゃったのか」


 まぁ、そんな日もあるわな。今日帰ってきたら伝えておこう。別にこのポシェットはアイツが使時に必要なくらいだし……


「って今日配信日じゃねぇかあああああああああああああああ」


 ヤバいヤバいヤバい。ポシェットには優里の配信で使う道具が入っているので、これがないと非常に困るのである。


「時間は!?」


 画面に映る配信開始時間を見ると、後15分と表示されていた。


「ああもう、仕方ない!急いで届けてやるか!」


 ひったくりのようにそのポシェットをもぎ取ると、エプロンを付けたまま俺は慌てて家を飛び出した。

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