こっくりさんはいつも腹ペコ

おころん

はじまり

 僕は、いや僕達はとんでもない事をしてしまった。

 でもまさか、こんな事になるなんて誰が思うだろう?

 たまたま小石を蹴ったら、たまたま車が小石を踏んで、たまたま弾いてしまい、たまたま飛んだ小石が民家の窓を割り、たまたまそこにいた僕が疑われる。

 そんな奇跡や偶然が重なって、重なりすぎないと起こらない出来事だ。


かなめー?今日のご飯はどれにするのじゃあー?」


 僕には兄妹はいないし、普段はこの自室に僕1人だけだ。

 でも最近は堂々と僕の部屋に上がり込んでくる者がいる。


 彼女は僕のベッドに寝転んでは、左、右、左、右、と足をパタパタとさせながら、ピザや寿司のチラシを並べ、お腹をぐぅ~っと鳴らしていた。

 このやり取りはもう慣れたが、ベッドに寝転がるのだけは止めてほしい。

 思春期真っ只中の僕には、足が動く度にチラチラと白い太腿が視界に入る。その都度、僕は心臓を跳ねあがらせてしまう。


 刺激が強すぎる。


「……今日は出前はしないよ」


「えぇー!!なんでじゃあ!?ピザだからか?寿司だからか!?高いからか!?」


 チラシに向いていた顔が勢いよく僕の方へ向けられる。

 あり得ない、信じられない、絶望だっ!と言った彼女の表情に僕は、溜息をつく事しか出来なかった。


「高いのもそうだけど、もう5日連続で出前してるじゃないか……ピザピザ寿司ラーメンピザ。油物ばかりで僕の胃が辛いよ」


「はぁ~、若いのに軟弱な胃じゃのぉー」


 彼女は口を尖らせてはチラシを何度か折り、紙ヒコーキを作った。

 その派手な紙ヒコーキは飛び立つと、僕の頭にツンッと当たり、墜落する。


「じゃあ要の食べたい物でいいぞ?妾は肉がいいなぁ~!」



 はぁ。僕の今食べたい物は胃薬と頭痛薬だ。



 いつでも食べ物の事しか頭にない彼女は、僕達が呼んでしまった、こっくりさんだ。




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