第2話 走馬灯

「なぁ、あれ、乗ってみる?」


「え~?マジで??あれ乗ると、みんな早くに別れちゃうって噂だよ?」


「いや、それって『吊り橋効果』で付き合ったらってやつだろ?高さとかおお化け屋敷に入った恐怖のドキドキを、恋愛のトキメキと勘違いするやつ」


「なにそれ?そうなの??・・・じゃあ、乗ってみる?」


 そう言って、私たちはカップルで乗ったら必ず別れるとの観覧車に初デートで乗り込んだ。小さい分、一周の乗っている時間が短く一回だけのくせにまぁまぁな値段を取られるにも関わらず、私はケチ臭いと思われるのが嫌で怯まずにカッコつけながら、そして二人ともが自分達は違う、特別な存在と絆で繋がっていると信じて疑わなかった。


「・・・ねぇ、さっきの言葉。『付き合ったら』ってことは、私たちはもう付き合ってるってこと?」


「ん?・・・さぁ、どうだろね」


「なによ、それ~」


「わっ、見て、下。こわ~」


「わ、ほんと、このリアルな高さで見慣れた景色を上から見るの、変な感じ~」


「え?あっこのカラオケ、こんなに近かったっけ?」


「うん、そうだよ」


「え~、じゃいっつも遠回りしてたわ」


「マジ?バカじゃん」


 そんな、私たちはひと時の二人きりの空間の雰囲気が気恥ずかしくて、無駄にいつもしないような世間話で自分の緊張を隠そうと必死だった。


「・・・ねぇ。頂上についたら・・・やっぱ、するの?」


 少し照れくさそうに言っているその表情が、凄く可愛く見えた。


「・・・え・・・そりゃ、定番、だしね・・・・・・」


「・・・もう少し、だね」


 私は徐に、向かい合っている状態から隣の席へと移った。


「キャッ!」


 一応に揺り籠状態のそのは、一人が移動した重みで少し揺られ傾き、私も少し心臓が高揚してときめいているのを感じた。


 頂上に到着すると左右の観覧車の箱からはお互いに見えなくなり、その瞬間に私たちはその年齢に相応しいような可愛いフレンチなキスをして、その後は手を繋いだまま会話は一切せずにその沈黙をお互いに噛み締め合っていた。

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