第49話 ストーカー?(その9)

「おはよう、月見里さん」

「おはよう」


 仁は学校に到着してから教室に向かったあと自分の席に座り、この日に使う教科書などの整理をしていた。すると音羽が教室に入り自分の席に座った。その際、仁が挨拶をすると、音羽は感情を込めない冷たい声で挨拶を返してきた。


(ここまで冷たく返されると、とても話しかけづらい)


 仁は音羽の挨拶を聞き、関わらないで欲しいと言う気持ちを強く感じてしまった。そのため、余計に話しかけ辛く感じてしまった。


「おはよー、兼田クン」

「えっ? ああ、おはよう」


 仁が少し暗い気持ちになっていると、同じクラスの女子が挨拶をしてきた。


(確か、この前、学食で同席した人だな)


 その女子は、先日学食で同席した人で、最近、よく挨拶を交わすようになっていた。


「おはようございます。兼田さん」

「おはよっ、兼田っち」

「いよっ、兼田。おはよーさん」


 それからも複数の女子が仁に挨拶を交わしてきた。


「ふーん」

「な、なに?」

「なっ、何でもないわよ」


 その様子を音羽が見ていたため、仁は何か用事があるのかと思い尋ねると、音羽は興味がなくなったように前の方を向いた。




「昼休みだぁ」


 何だかんだで午前の授業が終わり、仁が楽しみにしていた昼休みを迎えた。


「月見里さん」

「教室で気安く話しかけないで」


 仁が一緒に昼食を過ごすために話しかけると、音羽は大きな声で怒鳴った。すると大きな声に反応したクラスメイト達の視線が一気に集まった。


「ごめん、でも、教室では気安く話しかけないで。先に行って待ってるから」


 音羽は小声で仁にそう伝えた後、小さな手提げ鞄を持って教室から出て行った。


「なあに、あの月見里さんの態度」

「いつも思うのだけど、人と関わるのを拒んでいるようだわ」

「ちょっと頭が良いからって、なんか、嫌な感じよねぇ」


 音羽が教室を出ていくと、その様子を見ていたクラスメイトのひそひそと話す声が仁の耳にも届いた。


(月見里さんって、クラスの人から良く思われていないのかな?)


 仁は音羽のことが少し気がかりになったが、今は一緒に居る時間が減るのが惜しいと感じ、支度を調えた後、音羽がいるところへ向かった。



「待った?」

「全然」


 仁が3階から屋上に向かう階段を上ると音羽が待っていた。彼女は昨日と同様に階段の最上段に座り、足が少し開いていたためスカートの中にある布が見えていた。


「今日はピンクなんだ」

「えっ? 今日も白おにぎりだけど……。って、はっ! あ、あ、あ、アンタっ、もしかして見たよね? もしかして昨日、白って言ったのは、変態っ!」


 昨日は白であったため誤魔化せたが、今日は色が違ったため、音羽は仁が何の色を言っていたか気が付き、慌てて足を閉じた。そして羞恥から顔を真っ赤にしながら、仁に対して怒鳴った。


「不可抗力だよ。たまたま見えただけなんだ」

「くっ、油断して足を開いていた私にも落ち度があるけど、見えているのなら昨日のうちに言ってよっ」


 音羽は足を開いていた落ち度があるのを認めたが、スカートの中を見られたことに対して納得できない気持ちになっていた。

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