「言葉が分からないの? あ! もしかして外国の人?」

 男は顎を持ち上げて、少年の目を見た。彼はその強い眼光に思わず怯え、立ちすくんだ。

「……いや、言葉は分かる。でも、分からないんだ。オレが誰で……どこから来て……何があったのか」

 

 少年は目を見張って固まった。言葉を失っている。

 その時、男の尻ポケットに入っている固形物が不意に振動した。

 彼は、実に気怠そうな動きで後ろへ右手を回し、それを引っ張り出す。

 黒く四角いそれに目をやるなり、男は独りごちた。

「スマホ?」

 やがて、ピロロン、と電子音が鳴り、機械的で艶やかな女性の声がした。


『ハロー、ヤマト!』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る