エピローグ 11: マイケル•オサリバンの視点 (2/2)



夜が深まり、フィオナが寝室に入った後、マイケルとキャスリンはリビングのソファに並んで座り、暖炉の炎を見つめていた。静かな部屋には、薪がはぜる音だけが響いていた。二人はフィオナのことを話さずに、ただ互いの存在を感じながら、長い年月を共に過ごしてきた記憶に浸っていた。


「最近、昔のことをよく思い出すんだよ」マイケルがふと呟いた。


「どうして?」キャスリンが優しく問いかけた。


「昔、俺たちの親の世代が生きた時代のことさ。1900年代初め、まだアイルランドが自由を手に入れる前のことだ。彼らは本当に厳しい時代を生き抜いたよな。植民地支配の中で、貧困や飢饉にも苦しんで……それでも、家族や地域を守るために必死だった。」


キャスリンは静かに頷きながら、マイケルの言葉に耳を傾けた。彼女自身もその時代の話を何度も聞かされて育った。自分の祖父母たちが、イギリス支配の厳しさに耐え、農地での生活に苦しみながらも家族を養ってきたことを思い出す。


「本当にね。私のおじいさんも、ずっと土地を守って働いてきたけど、貧困から逃れるのは簡単じゃなかった。彼らの世代は、とにかく耐えることに慣れていたのよね。でも、何があっても自分たちの誇りを忘れなかった。それが、彼らの強さだったんじゃないかしら。」


「誇りか……」マイケルはぼんやりと呟いた。「俺たちの世代は、彼らほど苦しんではいない。自由も手に入れたし、経済も成長した。でも、あの時代の人々が持っていた誇りや根気が、今の世代にはどれだけ残っているんだろうな。」


キャスリンは少し考え込んだ後、優しく微笑んだ。「マイケル、確かに時代は変わったけど、その精神は消えてないと思うわ。今でも私たちの子供たちが、新しい形でその誇りを受け継いでいる。それに、あの時代の人たちは、今の私たちがどれだけ進んだかを見たら、きっと誇りに思ってくれるはずよ。」


「そうだといいな……」マイケルは小さくため息をついた。「あの時代のアイルランド人たちは、厳しい環境の中でも家族を第一に考え、土地を守り続けてきた。今の世代は、もう少し楽な時代に生きているが、それでも、あの精神を忘れちゃいけないと思うんだ。」


「私たちが覚えている限り、その精神は失われないわ。」キャスリンは、静かに言った。「だからこそ、私たちは自分たちが知っていることを子供たちに伝えていかなければならないのよ。」


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「俺たちの親の時代は、苦労ばかりだったが、それでも家族を守るために戦ってきたんだよな」マイケルは、祖父母たちの姿を思い浮かべながら話を続けた。「彼らは土地に深く根を張っていた。農作業や手工芸で生計を立てることが当たり前で、その土地を失うことは、自分たちのアイデンティティを失うことと同じだったんだ。」


「そうね、私の祖母もよく言ってたわ。『土地がある限り、家族は生きていける』って。でも、同時に彼らは時代の変化に飲み込まれつつも、強く立ち続けた。それがあの時代の人たちの誇りだったのよ。」


マイケルは火を見つめながら静かに頷いた。「確かにそうだな。俺たちがもっと若い頃は、そんなことあまり考えなかったけど、年を重ねると、あの時代の人たちの強さが本当に理解できるようになる。」


キャスリンは、そっとマイケルの肩に手を置いた。「私たちもまた、違う形でその誇りを守ってきたのよ。そして、これからもそうしていくの。」


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マイケルとキャスリンは、過去の世代の話をしながら、静かに時を過ごしていた。彼らの会話には、親としての誇りと、過去の世代が築いてきたアイルランドの精神への敬意が込められていた。フィオナの話が出ることはなかったが、彼女もまたその精神を受け継いでいることは、二人とも心の中で強く感じていた。


「さて、もう寝ようか」とマイケルが言った。


「そうね、明日も忙しいわ」とキャスリンが笑顔で応えた。


暖炉の火が静かに燃え続ける中、二人は手を繋いで立ち上がり、ベッドルームに向かった。

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