第40話
「恐らくですが、向こうの港で襲撃があるでしょう」
魔物が出る海域まではしばらくかかるということなので、船内でゆっくりと休んでいた俺はヴィクトールさんに呼び出されていた。
どうやら俺と同様、何もなかったことに違和感を感じていたらしい。
「それはラーク王国とゴルブル帝国が繋がっている、ということでしょうか?」
「どれほどの仲なのかはわかりませんが……王国で襲われ帝国に飛ばされてきたわけですから、関係がまったくないと思う方がおかしいのでは?」
「……たしかにそうかもしれません」
だがラーク王国とゴルブル帝国が繋がっているとしたら、俺達は一体どこに向かえばいいのだろうか?
もしラーク王国へ行き領都ベグラティアへ戻ると同時、向こうで捕まったりしたら目も当てられないぞ。
ひょっとして、カムイ達にも追っ手がかかっていたりするのかな?
だとしたらなおさら、合流が難しくなるような気がするけど……って、今はあまり不安になるべきじゃないか。
全てはあっちに行けばわかることだ。余計に考えるだけエネルギーの無駄遣いだ。
後のことは、臨機応変に対応するしかない。
転移してきた時もなんとかなったんだ、次だって大丈夫さ。
「海を渡るのはかなりの大仕事です。昼夜を絶えず続く戦いで疲弊したところを、一網打尽にする腹づもりなのでしょう。あるいは派閥争いのせいで国内だとあまり好き勝手動けないという可能性もありますが……なんにせよ手ぐすね引いて待ち構えているのは間違いないかと」
ヴィクトールさんが同行できるのは、大陸間航行の間だけ。
彼は優しいけれど、同時に厳しい人間でもある。
向こうで何かあっても、それに対応するのは俺達じゃなければならないと彼は言う。
「なんにせよ、ここから先は僕としてきた修行が活きてくるでしょう。二人にはしっかりと基礎体力を鍛え、常在戦場の心構えを叩き込みました。今のクーン君達なら海での戦闘もなんとかできるはず……」
ヴィクトールさんの声をかき消すように、アリサのうめき声が聞こえてくる。
彼女はどうやら船がかなり苦手らしく、潮が荒くなってからというもの常にグロッキー状態だった。
船の上から大量の撒き餌を撒き散らし、幽鬼みたいに顔が真っ青になってしまっている。
「アリサの様子を見てきます」
「はい、身体強化を使えば少しマシになるはずですから、伝えてあげて下さい」
「わかりました!」
俺はアリサの下へ向かい、彼女の介抱をすることにした。
身体強化で三半規管をしっかりとイメージしながら強化させることにより、酔いはピタリと止まった。
そして元気になった俺達の下に、大きな銅鑼の音が聞こえてくる。
「魔物ね、行きましょ!」
「食べられる魔物がいるといいね!」
俺達は余裕のある状態で甲板に向かう。
そして昼夜を問わず襲ってくる魔物達への応戦が始まったのだった――。
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