子供リサイクルセンター

@youmu_yowashi

本編

連れてこられた空間は子供の泣き叫ぶ声で満ちていた。ここは、「子供リサイクルセンター」。人の持つ生命エネルギーを吸い出して電気に変えてしまう施設だと言われている。何列かに並ばされた子供が一人、また一人とコンベアに乗せられていき、その度に泣き声は大きく聞こえてくる。きっとあのコンベアを降りた時私はもうまともに思考することもできないのだろう。両親に捨てられ、電力に変換され、誰ともしれない人の食い物にされる。こんなこと間違っていると誰も思わないのだろうか。


「諦めちゃダメだよ。」


突然、私の前から声がした。声の方向に顔を向けると、男の子が私のことを見ている。


「僕はなんとしても生きて帰ってみせる。」


なぜこの子がわざわざ私にこんなことを告げたのかはわからない。でもこんなところにつれてこられても尚、彼の目には光が宿っているようだった。

彼の影に弟の姿が重なる。両親に捨てられたことがわかったあの日、下を向いて泣くことしかできなかった私の横で弟は前を向いていた。そうだ、姉である私がいつまでもメソメソしているわけにはいかない。

そうだ。私はまだ、生きたい。家族ともう一度会いたい。諦めきれない。私だって耐えてやる。耐えて、もう一度あの家に帰るんだ。


「じゃあ僕、いってくるから。」


彼は職員に連れられてコンベアの先へと姿を消し、また少しして私も職員の人に掴まれコンベアに乗せられた。どれだけエネルギーを吸い取られようとこの心の中の炎だけは絶やさないと、流れるコンベアの上で心に誓った。

コンベアの先の扉が開き、熱波が襲ってくる。耐え抜くんだ。どれだけエネルギーを吸われようと...!

突然、私の体が宙に放り出された。開いた扉の先にコンベアは続いておらず、なにがなんだかわからない私の目にはただごうごうと燃える炎だけが写る。下には、生きたまま燃える人間とその残骸が散らばっていた。


「た 、すけ、 て。」


私の心に芽生えたちっぽけな種火は、目の前の業火でかき消された。

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