ボクとトイとケイ

湖ノ上茶屋(コノウエサヤ)

第1話


 ボクには、ケイという名前の友だちがいる。小さい頃から同じ街に住んでいて、園や学校がずーっと一緒。時々、休みの日に一緒に出かけたりもするくらい、ボクらは仲良し……だと思っていた。

 だけど、ある日、ケイに話しかけたら、そっけない言葉と冷たい視線が返ってきた。ボクは突然、敵意のような何かを向けられたと感じた。

 驚いた。混乱した。困惑した。焦った。

 考え事がぐるぐるして、冷静な判断をすることなんて、できなくなった。

 何をしてしまったかわからないけれど、とにかく謝ったほうがいいと思って、

「ご、ごめん!」

 頭を下げて、謝った。でも、謝っても、元通りにはならなかった。


 それからボクは、ケイとろくに挨拶もできなくなった。


 ケイがいないと生きていけない、なんてことはない。

 でも、ケイと話せないってなると、心がチクチクして仕方ないんだ。

 たまたますれ違っただけの、名前も知らない誰かだったら気にならない。

 でも、ケイだと気になる。


 ボクはこの悩みについて、クラスメイトのマイクに相談してみた。

「なんかした? って、訊けばいいじゃん」

「それができたら、苦労しないよ」

「余計な苦労をしてるだけだと思うけどな。訊く方が絶対に楽だと思うけどな」

「マイクにとってはそうかもしれないけれど、ボクにとってはそうじゃないんだよ」

「ふーん」

 ボクの心は、ズバズバものを言えるマイクには、わかってもらえない。

「ま、あれだ。俺じゃ今のお前の力にはなれそうにないや。ミヤナさんのところにいこうぜ。きっと力になってくれるから」

 そう言って、ずんずん力強く歩くマイクの後ろを、ボクはとぼとぼとついて行く。



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