第2話

その少年は、捨て子でした。

なんと、児童養護施設の門の目の前に捨て置かれているところをそこの施設に保護された子供なのです。

…ここまで来ると、主人公の少年は「かわいそう」という物で埋め尽くされるでしょう。しかし、彼の境遇はそんな生優しくて、身勝手で、偽善で、無力な物で言い表せる物でもありません。


単刀直入に言いましょう。

彼は、はっきり言って


『異常』


でした。


「周りと比べたら」。


彼の趣味は、生き物を殺すことでした。


彼がまだ2歳くらいの時、彼は職員が目をちょっと話した隙に1人で外に行き、そして、地面を這いつくばっていた小さな蟻の行列を見つけると、それを一気に踏み潰したのです。

これは、まだしも『異常』なことと見做されませんよね。

私も小さい頃にはなんの悪気もなく、ただ無邪気にそういうものを殺してきましたから。

皆さんも、そうでしょう?

さて、彼が『異常』なのはここからでした。

彼はそのぐじゃぐじゃに踏み潰されたその死骸を見て、思いっきり笑い出したのです。

とても楽しそうに。しかも、生まれた初めて何か面白くてたまらない物でも見たとでもいうように。

運の悪いことに、その現場をやっと追いついてきた職員がそれを目撃してしまいました。

彼女の目には、今までどんなことをしても笑顔の一欠片も見せなかった彼が急に笑い転げたところは、もはや狂気にしか見えなかったでしょう。

彼女はすぐさま彼を蟻の死骸から引き離し,施設へ連れて帰りました。

そして、彼に何度も言いつけました。


ああいう行為を今すぐやめなさい。

あれは、誰からも認められない。

[ ]君(彼の名前)だって、みんなに仲間はずれにされたくないでしょう?

だから、もうああいうことは絶対にしちゃダメ。分かった?


彼には一体何がダメなのかちっとも分からなかったそうです。


僕は、とても楽しくて好きなことを見つけたのに、何がいけないんだろう…

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