第2話 前世の記憶
気が付くと、俺はベッドの上にいた。とても頭が痛い。転生の反動かな…。
次第に痛みが薄まると、俺は周りを見渡した。
如何にも高級そうな家具にインテリア多数…貴族か?
「アル様っ、気が付いたのですね!」
突然、メイド服を着た女性がバタン!とドアを開けて部屋に入ってきた。
「よかったですぅ!雷に打たれて倒れたときは、死んでしまったのかと思いましたよ!」
彼女は安堵した目でこちらを見た。
残念ながら俺には前世の分しか記憶が無い。
なのでこの人が誰なのかも勿論分かるはずがない。
メイド服着てるから、メイドということだけは分かる
「誰?」
「え?」
あ、めっちゃ動揺してる。
確かに自分の主(または主に関係のある人)が突然自分を見て「誰?」なんて、悲しいだろうね。
「あの〜、俺君のこと忘れたみたい。あはは…」
* *
メイドから話を聞いたところ様々なことが分かった。
俺がジェトラル男爵家三男アル・フォン・ジェトラルであること。
長男が傲慢で、二男と三男を見下していること。
その長男は今、学園で泊まっているので、卒業するまで帰ってこれないこと。
ニ男は自分に対して優しいこと。
メイドの名前はフェルノであること。
…
「……ということなのです!」
「なるほど。そういえば、ここはどこなの?」
2回目とはいえ、新しく人生を歩むのだから、身の回りの情報はしっかり確認しないとな。
「はい、ここは大陸の東にあるリトナード王国の東側のジェトラル領の屋敷です。リトナード王国はこの大陸でも有数の国力を有しています。また、王立魔法学園があるので、魔法使いの割合も多いんです」
そういえば俺は魔法やスキルが使えない代わりに『アンチ』能力を持っているんだ。一度戦ってみたい。
ていうか魔法学園か、楽しみだぜ!
「その学園は魔法が使えなくても入れるのか?」
「いいえ、基本的には魔法が使えない者は入学できません。ただし、魔法に勝るほどの攻撃手段があれば推薦で入学が可能です」
なら俺も入れそうだな。
「よかったら当主に推薦させてもらうように説得いたしましょうか?」
「いや、いい。推薦してもらうなら、実力を見せてからだ」
「わかりました!」
とりあえず俺は自分の父(当主)に会うことにした。
部屋から出て、フェルノに父の部屋へ案内させてもらった。
コンコン
「失礼します」
ドアを開けると、如何にも厳格そうな男性が椅子に座っていた。
うん、テンプレ通りだな。
俺は貴族の子供なので、年上に敬語を使わないといけないだろう。
ましてや父など、敬語を使わなければ、その時点で子供に対する評価がガタ落ちだろう。
ちなみに俺は前世で興味本位に異世界系の小説を書こうとしたので、書くときに必要だった貴族に関しての知識はある程度知っているのだ。
『俗にいう異世界と変わらない』と神も言ったし、ここは前世の知識を使おう。
あれ、俺が記憶をなくした理由をどうやって説明すればいいんだ?
よし、どんな状況だったとしても、違和感のない説明をしよう。
「父上、只今起きました。実は私、記憶をなくしてしまったようです」
「わかった」
「…え?」
そんなあっさり?
「なんだ、俺が息子の真偽を見分けられないとでも?」
「いいえ。では失礼します」
「ちょっとまて」
「なんでしょう?」
「…いや、なんでもない」
「では失礼します」
父上は何を言おうとしたのかな…。ま、いっか。気にしない、気にしない。
俺は早くここから出たいと思わせないように注意しながら、ドアをできるだけ速く閉めた。
そして目の前にはフェルノが。
「アル様、どうされましたか?」
「…なんでもない」
「そういえば、勉強したことも忘れてしまったのですか?」
「うん」
「では私がビシバシ教えます!」
それから俺は血反吐が出るほど勉強をすることになるのだった。
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